残業代不払い法案と過労死の関係

時間と賃金の関係を断ち成果に応じて賃金を支払うことでライフワークバランスの向上が図れると経済産業省は言っています。

しかし、合法か否かはともかくとして、現実として、時間と賃金の関係が断ち切られた給料体制を強いている会社は今でもまったく珍しくありません。 例えば、給料の一部を固定残業代を支払って、いくら働いてもそれ以上は一文も支払わないなんて会社はよくあります。また、一定時間以上の残業の申請は実際に残業していても認められずサービス残業を強いられる会社など珍しくもありません。

そして、私が過労死や精神疾患の労災申請を行う事例で、タイムカードなどで、きっちり時間を管理した上で、残業代をしっかり全額支払っている会社なんて見たことがありません。

現に過労死問題を起こしているのは、時間と賃金の関係が断ち切られている会社なのです。 今の法改正の議論は日本全体をブラック化するものです。

最近の裁判官からときどき聞く言葉

ここ,1,2年の間に,単独事件で裁判官と協議していて

裁判所の示した見解に私が反論すると

「合議した結論ですから」

と言って,話を打ち切ろうとされるということが数回ありました。

 

裁判所は最高裁を除いてどんな大事件でも3人で決めます。裁判所の所長や最高裁に決済を得る必要はありません。わずか3人で再協議するだけの話ですから(数万人の組織なら一度決まったことは簡単に動かせないというのも分かりますが),私の話をしっかり聞いて,再検討すればいいだけの話で(結論が変わるかはともかくとして)何の理屈にもなってないだろと思いますが,まあ合議事件は他の裁判官と協議しなければならないのは事実なので百歩譲ってよしとしましょう。

 

しかし,単独事件でそれはないでしょ。

憲法をひくまでもなく,裁判官は法と良心のみに従い独立して職権を行使すべき立場です。単独事件ならその裁判官が自分の考えに従って判断するだけで,他の裁判官は口出しする権利は一切ないのです。

判断に迷った際に同僚などと議論し参考とするのは(あくまで参考にとどめることが前提)軽率な判断を防止することにもなり当事者にとっても有用で,否定されるようなものではありません。

しかし,同僚との議論の結果,法的判断を行う実質的な根拠が見つかり,根拠に基づき説得するのなら分かりますが,単に「部長(合議事件をやるときの裁判長)も左(合議事件で一番若輩の裁判官)もそういってるんですよー」とドヤ顔をしながら言われても・・・プライドはないのでしょうか?

 

 

労働審判に事前交渉は必要か

労働審判についての裁判所との協議会で問題のある弁護士として、事前交渉をせずに申し立てをする弁護士というのが挙がっていたという話題がある会議で出ました。

事前交渉しない弁護士って私のことですね・・・書記官から事前交渉状況について問い合わせられたことが何度かあります。

確かに、労働審判規則9条1項3号には交渉その他の申し立てに至る経緯を記載しなければならないと記載されています。私も解雇(解雇以外では私はあまり労働審判は使いません。)に至る経緯は必ず書きますが、受任してからの交渉はそもそもせずに申し立てることの方が多いので、交渉していなければ特に記載せずに申し立てています。

しかし、規則にも交渉を含めた経緯を書けと言っているだけで、事前交渉をしろとは書かれていないよね。

そもそも、解雇通知というのは絶縁状みたいなものです。
絶縁状を送りつけてきた人間と何を話し合うのでしょうか?
労働法を守ろうという意識が皆無に近い多くの中小企業と、国家権力を背景にした裁判所の外で交渉しても、裁判所での交渉よりはるかに低い水準の回答しか得られないことがほとんどです。はっきり言って時間の無駄となることがほとんどです。

私が、事前交渉するのは労働審判より低い水準で良いので、裁判沙汰にはしたくないと積極的に依頼者が望んでいて、しかも使用者側が話し合いの姿勢がうかがわれるときのみです。

そもそも、どのタイミングで裁判や調停を起こすかは原告側の自由ですよね。
もちろん、債務不存在確認訴訟などが口封じのために濫用されているのではと考えさせられる事案もなくはなく、原則論だけの議論では意味がないと思いますが、
解雇事件の場合は使用者側から解雇通知(労働者は下手をすると本当に路頭に迷いかねない)を送りつけるというサンクションを起こしているのですから、当然、解雇の正当性を準備して行うべきで、いつ訴訟提起されたとしても覚悟すべきでしょう(実際、顧問弁護士がいる企業なら顧問に相談してから解雇するのが通常でしょう。)。

とすると、なんで文句言われなければならないのでしょうか?

残業代不払法案は過労死促進法である

従業員の仕事を把握し,業務の進め方に不効率な点がないかを確認し,改善方法を検討し,残業代の抑制(経費の節減)を図るのが経営者や管理職の役割です(当然私も一経営者として行っています。)。
経営者は,残業させると,通常より高額な残業代を支払わなければならないという,法制度があるからこそ,仕事の効率化を一生懸命考えるわけです。
効率的な働き方などを掲げて,残業代を削減する法案がゾンビのように出てきますが,むしろ割増率をあげるべきでしょ。

残業代がつかなければ労働者は確かにさっさと返りたいという気持ちになるかもしれませんが,そもそも労働契約は使用者の指揮命令に服するという契約です(法的にも実際にも)。使用者に夜中まで働けといわれれば(夜中まで働かなければこなせない仕事を課すというやり方の方が一般的かもしれませんが,同じことです。)労働者は帰れません。使用者側が使い放題で労働時間削減のインセンティブがないのでは,死ぬまでこき使うということになるに決まっています。
また、労働者や労働組合が同意していれば良いのではないかという内容で法整備がなされていますが、愛情を持って殴るなどというワタミの社長のような人物に迫られて断り切れるような人間は少数派です。このような法案を通せば、日本社会は確実に破壊されてしまいます

 

労働弁護士として日々実感すること

私は労働者側の弁護士として日々活動していますが、他方で、一人だけとはいえ従業員を雇っており、使用者でもあるという、よくよく考えると矛盾した立場にあります。

零細使用者であり労働弁護士として日々感じるのは日本の法制度や裁判実務が悪徳経営者が得をし、正直者の経営者が損をするように作られているということです。

たとえば残業代の問題では、残業代の時効が2年間であること、使用者に労働時間の把握義務があるにもかかわらず、この義務を誠実に履行していない使用者が証拠がないとして救済されてしまいます。

また、パワハラでやめざるを得なくなったとしても、暴行などの刑法犯にあたるような行為でも数十万円の慰謝料が認められてそれでおしまいです。辞めざるを得なかったというところは、現在の裁判所では損害として認められていません。使用者はたった数十万円で労働者を追い出すことに成功しますが、労働者は仮に訴訟に勝ったとしても職探しをしている間の生活費としてすぐになくなってしまい、焼け石に水となってしまいます。

裁判所は、やったもん勝ちになっている実情をもっと直視すべきです。

非正規雇用の今後の制度設計についてーNHKスペシャル若い女性の貧困を視聴してー

若い女性の貧困についての4月27日に放送されたNHKスペシャルを見ました。

http://www.nhk.or.jp/special/detail/2014/0427/

 

この番組については,現状の紹介にとどまっており,

福祉制度の紹介や原因の分析,批判が全くなされていないとの批判が数多くなされているところです。

私からは,労働分野についての視点からコメントをしたいと思います。

今、労働時間や地域を限定した限定正社員制度を導入して、解雇規制を緩めようという動きがあります。また、現行法の解釈でも裁判官が労働法の論点を解説した「労働関係訴訟の実務」(通称白石本)でも、勤務時間が短いという非正規であることに労働者にもメリットがあるとされる「互恵的非正規雇用」については解雇権濫用法理による保護が薄くてよいという意見もだされています。

番組の中でも紹介されているように,短時間の勤務を選ぶという理由は様々です。育児や介護を抱えたくわえを切り崩しながらギリギリの生活をする短時間勤務をするパート労働者やまともな職が見つからないで仕事を掛け持ちするパート労働者も少なくありません。一番保護が必要な最底辺の労働者の保護を切り崩すような主張は許してはなりません。