若い女性の貧困についての4月27日に放送されたNHKスペシャルを見ました。

http://www.nhk.or.jp/special/detail/2014/0427/

 

この番組については,若い貧困女性の現状の紹介にとどまっており,

福祉制度の紹介や原因の分析,批判が全くなされていないとの批判が数多くなされているところです。

生活保護などの制度については、私より詳しい方のコメントが多数ありますので、私からは,労働分野についての視点からコメントをしたいと思います。

今、労働時間や地域を限定した限定正社員制度を導入して、解雇規制を緩めようという動きがあります。また、現行法の解釈の分野でも裁判官が労働法の論点を解説した「労働関係訴訟の実務」(通称白石本、裁判所の公式見解というわけではありませんが、実務上かなり大きな影響力があると一般的に理解されています。)でも、勤務時間が短いという非正規であることに労働者にもメリットがあるとされる「互恵的非正規雇用」については解雇権濫用法理による保護が薄くてよいという意見もだされています。

まず、有期雇用を選ぶメリットがある労働者と言いますが、そもそも意味不明です。無期雇用の場合でも労働者は2週間前の告知すればいつでも退職は可能です。一方、有期雇用の場合、契約期間中は原則として使用者の方から解雇することは許されませんが、労働者の方からの退職も制限されていますので、むしろ制約が大きくなります。

労働時間が短いことやシフトが柔軟であるというのは、有期雇用か無期雇用かとは全く別の問題です。契約期間について特段の定めがない無期雇用のパートタイム雇用契約というのはよくある契約形態です。また、フルタイムであっても有期雇用ということも珍しいことではないのであり、労働時間が短いかと有期かというのは全く無関係のことです。

番組の中でも紹介されているように,短時間の勤務を選ぶという理由は様々です。育児や介護を抱え蓄えを切り崩しながらギリギリの生活をする短時間勤務をするパート労働者やまともな職が見つからないで仕事を掛け持ちするパート労働者も少なくありません。短時間やシフトや緩やかな勤務を望む労働者が必ずしも、いわゆるパート主婦のような家計補助的な立場で働けばよいというわけではないのです。この番組で紹介されているように少しでも収入が減少すれば、生活の維持が困難になるような一番保護が必要な最底辺の労働者の保護を切り崩すような主張は決して許してはなりません。

このコラムの監修者

  • 増田 崇弁護士
  • 増田崇法律事務所

    増田 崇弁護士(第二東京弁護士会所属)

    2010年に増田崇法律事務所を設立。労働事件の専門家の団体である労働弁護団や過労死弁護団等で研鑽を積み、時には講師等として労働事件の専門家を相手にして発表することもある。2019年の民事事件の新規受任事件に占める労働事件の割合は100%である。