労働審判における事前交渉についての裁判所の見解は・・・

労働審判についての裁判所との協議会で問題のある弁護士として、事前交渉をせずに申し立てをする弁護士というのが挙がっていたという話題がある会議で出ました。
事前交渉しない弁護士って私のことですね・・・書記官から事前交渉状況について問い合わせられたことが何度かあります。

労働審判法の規定だと

確かに、労働審判規則9条1項3号には交渉その他の申し立てに至る経緯を記載しなければならないと記載されています。私も解雇(解雇以外では私はあまり労働審判は使いません。)に至る経緯は必ず書きますが、受任してからの交渉はそもそもせずに申し立てることの方が多いので、交渉していなければ特に記載せずに申し立てています。
しかし、規則にも交渉を含めた経緯を書けと言っているだけで、事前交渉をしろとは書かれていないよね。

実際問題事前交渉は時間の無駄になることが多い

そもそも、解雇通知というのは絶縁状みたいなものです。
絶縁状を送りつけてきた人間と何を話し合うのでしょうか?
労働法を守ろうという意識が皆無に近い多くの中小企業と、国家権力を背景にした裁判所の外で交渉しても、裁判所での交渉よりはるかに低い水準の回答しか得られないことがほとんどです。はっきり言って時間の無駄となることがほとんどです。

私が事前交渉を行うのは・・・

私が、解雇事案で事前交渉するのは労働審判より低い水準で良いので、裁判沙汰にはしたくないと積極的に依頼者が望んでいて、しかも使用者側が話し合いの姿勢がうかがわれるときのみです(なお、退職勧奨を受けているという依頼の場合は、解雇されているわけでもないので、当然交渉から始まります。解雇を前提にお話ししています。なお、残業代の場合は、資料の収集をする必要があるため、最初に資料を出すよう要求してから法的措置に移ることが多いです。)。
そもそも、どのタイミングで裁判や調停を起こすかは原告側の自由ですよね。
もちろん、債務不存在確認訴訟などが口封じのために濫用されているのではと考えさせられる事案もなくはなく、原則論だけの議論では意味がないと思いますが、
解雇事件の場合は使用者側から解雇通知(労働者は下手をすると本当に路頭に迷いかねない)を送りつけるというサンクションを起こしているのですから、当然、解雇の正当性を準備して行うべきで、いつ訴訟提起されたとしても覚悟すべきでしょう(実際、顧問弁護士がいる企業なら顧問に相談してから解雇するのが通常でしょう。)。
とすると、なんで文句を言われなければならないのでしょうか?

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このコラムの監修者

  • 増田 崇弁護士
  • 増田崇法律事務所

    増田 崇弁護士(第二東京弁護士会所属)

    2010年に増田崇法律事務所を設立。労働事件の専門家の団体である労働弁護団や過労死弁護団等で研鑽を積み、時には講師等として労働事件の専門家を相手にして発表することもある。2019年の民事事件の新規受任事件に占める労働事件の割合は100%である。