精神疾患の診断基準はいろいろありますが、最も一般的な診断基準は米国精神医学会が定めたDSMとWHOが定めたICD10です。医学論文ではどちらかに準拠して病気を定義して論文を作成しています(うつ病の人に●●という薬が効果があったとか、うつ病の発症直後に●●という治療が効果があるといっても、うつ病というのがどういう病気かちゃんと定義を共通化しておかなければ、議論ができないため、このような統一基準が作成されているのです。)。そして、労災の判断では厚生労働省はICD10で判断すると通達で定めています。
ICD10のうつ病の診断基準では
①抑うつ気分
②興味と喜びの喪失
③疲れやすさ
の主要症状3つ中2つ以上と
(a)集中力と注意力の低下
(b)自己評価と自身の低下
(c)罪責感と無価値観
(d)将来に対する希望のない悲観的な見方
(e)自傷あるいは自殺の観念や行為
(f)睡眠障害
(g)食欲不振
の主要症状意外の症状2つ以上が約2週間以上継続することとなっています(ICD10)。
上記の診断基準はたくさんある精神疾患の中でうつ病と確定するための基準で、この基準を満たさなくてもうつ病以外の精神疾患(例えば適応障害)ではあるということは大いにあり得ることです。
正確な診断は医師にご相談していただくほかありませんが、とりあえず簡易診断を進める上でポイントなのは症状が何個あるかということよりも、
①症状が継続していること
②症状により生活の質に支障が生じていること
の2つです。
健康な人でも、大きなストレスがかかれば、不眠や気分の落ち込みといった症状は発生します。しかし、健康な人なら数日休めば大幅に回復しますが、病気の場合は休んでもすぐには回復しません。
精神科医はうつ病の人を伸びてしまったバネばかりに例えることがあります。ストレスという重りが乗ると正常なバネも伸びますが、正常であれば重りを外せばバネは元通りになります。しかし、バネが伸びてしまうと、重りをはずしても伸びたままで元には戻りません。正常な人であれば平日は仕事のストレスでへとへとで、気分の落ち込みだったり、ストレスで眠れないといったことがあったとしても、週末に2日間しっかり休めば、かなり回復します。しかし、うつ病の人は休日仕事のストレスから解放されても伸びたばねの様にすぐには症状が治まらないところが病気であると説明します。
ここでポイントなのは症状がある程度継続しているかということです。
健康な人でも、大きなストレスがかかれば、不眠や落ち込みといった症状は発生します。しかし、健康な人なら数日休めば大幅に回復しますが、病気の場合は休んでもすぐには回復しません。
また、一定の症状があったとしても、滅多に発生しないためほとんど気にならないとか、現実的に仕事やそのほかの社会生活に特段の支障がない(仕事が進まないとか、会社に行くのがつらいというようなことがない)のであれば、わざわざ病気ということはないのではないしょうか。
このコラムの監修者
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増田崇法律事務所
増田 崇弁護士(第二東京弁護士会所属)
2010年に増田崇法律事務所を設立。労働事件の専門家の団体である労働弁護団や過労死弁護団等で研鑽を積み、時には講師等として労働事件の専門家を相手にして発表することもある。2019年の民事事件の新規受任事件に占める労働事件の割合は100%である。