神奈川県内の学習塾ステップの元教室長の精神疾患について労災認定を獲得しました

昨日、マスコミで報道されていますが、私と伊藤克之弁護士が担当した、神奈川県内で多数の学習塾を展開する株式会社ステップ(東証一部上場企業、本店所在地:神奈川県藤沢市藤沢602、代表取締役:龍井郷二氏)の鴨宮北校の元教室長の精神疾患について、労災認定を獲得しました。

小田原労基署は1か月以上の連続勤務を行っていたとして、労災と認定しました。

被災者は、通常の授業に加えて、定期テスト直前のテスト対策授業、受験前であるため中学3年生への進路指導などの業務で負担が重くなっているところに、部下の1名が予定を前倒しして産休に入るなどのトラブルが重なり、連続勤務となってしまいました。

ステップは教室長は管理職であるとして(部下と同じコマ数を担当していたし、採用計画を自ら立てて自分の授業負担を調節できるなど、特段の権限もなく、むしろ教室の管理を行っていたため、基本的に最初に来て自ら戸締りをして帰るという状態で出退勤の自由などない状態であり、名ばかり管理職であることは明らかでした。)、一切時間管理を行わなず、長時間のサービス残業を労働者に強い、1人でも休むと授業が回らないぎりぎりの人員配置をするため、悪質な労務管理をしてきました。

ステップは教室長については管理職扱いしていますが、残業代を一切支払っていません(残業代の不払いは、犯罪行為です。)。

教員や教育産業従事者の長時間労働・過重労働の撲滅に向けて

教員の過重労働が問題となって久しいですが、教育産業も教員出身者が少なからず存在します。労働時間を管理するという意識が元々希薄であることに加えて、子供のためという大義名分があること、イベントや追加の補講や指導などをすれば生徒が喜んだり奮起する姿が見られ、労働者のやりがいを刺激される機会はいくらでもあり、ついつい無理をしがちなこと、何をどこまでやればよいのか明確でなく際限がなくなりがちであるという教育の性質から、長時間労働が蔓延しています。

私は、会社に対する責任追及などを通じて今後もこのような過重労働を撲滅すべく尽力していきます。

追記:労災認定の後、示談交渉を行っていますが、会社側は当方に対し、和解案提示の前提として労災の資料の開示を求めました。当方からステップから開示に応じるが、会社側も手持ちの労基署への提出資料の提供を求めたところ、労働実態とはあまり関係ない会社案内などの当たり障りのない資料のみ開示すると、しかもその他にも提出し資料があることをあえて秘して回答するなど、不誠実な対応を繰り返しています。当職としては、徹底した責任追及をしていく所存です。

 

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このコラムの監修者

  • 増田 崇弁護士
  • 増田崇法律事務所

    増田 崇弁護士(第二東京弁護士会所属)

    2010年に増田崇法律事務所を設立。労働事件の専門家の団体である労働弁護団や過労死弁護団等で研鑽を積み、時には講師等として労働事件の専門家を相手にして発表することもある。2019年の民事事件の新規受任事件に占める労働事件の割合は100%である。