佐川急便ドライバーの精神疾患について、労災認定を獲得しました。

本日、佐川急便のドライバーの精神疾患について、熊谷労働基準監督署の労災認定について記者会見を行いました。

同社については、私が担当するだけでも複数の労災申請を行っており、顕在化していない被害者はまだまだ多数いるものと思われ、佐川急便の悪質性は際立っています。

過去にも、過労により労災認定され、裁判となったこともあります。

組織的に労働法規を軽視した企業の違法行為に対しては、徹底的に責任追及を行います。

単に長時間労働があるというだけでなく、佐川急便では、従業員に客先で顧客が荷物の準備のための待機時間が休憩時間であるなどとして休憩時間が存在すると虚偽の申告をするように圧力をかけたり、業務の効率化や業務分担の見直しなど現実の残業時間削減のために必要な業務指導を行わずにただ残業時間が一定時間を超えないよう圧力をかけるため、タイムカードを打刻してから残業を行わせたり、タイムカード打刻前の残業を行わせるなど違法行為の強要が行われ、そのような違法行為に異議を述べる社員に対しては、業務を外す(荷物の仕分け作業の担当に回すことで、体力的によりきつい仕事(配送の仕事の場合運転時間中は筋力を使う作業ではなく、その意味では体を休められるが、営業所の荷物の仕分けは、ずっと荷物の上げ下げを続ける仕事であり、体力的にはむしろハードです)をさせ、しかも外回りの仕事をしているときに支給される手当がなくなり、10パーセント以上給料が減ることになるなど、大きな不利益となります。)、きつい業務を担当させるなどの嫌がらせ・パワハラ行為が行われています。さらに、管理体制が不十分なためか、上司の個人的な好悪での嫌がらせなども頻発しているとの話も複数聞いているところです。

佐川急便は上場に伴い、就労環境の改善や労働関係のコンプライアンスの強化を図っているとの情報もありますが(会社側からのマスメディア向けの説明だけでなく、労働者側からの情報もあり一定の改善があったのは事実のようです。)、まだまだ違法行為が山積みとの話でありますし、過去の悪行が帳消しになるわけではありませんし、佐川急便での過労による疾患で苦しんでいる被害者や遺族の苦しみがなくなるわけでもありません(もちろん、改善がないよりはあった方が、ずっとましなのは否定しませんが、佐川急便が過去の違法行為について認めて、反省の念を表明したわけでもありません。)。

私としては、佐川急便をはじめとした組織的に労働法規を軽視した企業の違法行為に対する責任追及を徹底的に行っていく所存です。

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このコラムの監修者

  • 増田 崇弁護士
  • 増田崇法律事務所

    増田 崇弁護士(第二東京弁護士会所属)

    2010年に増田崇法律事務所を設立。労働事件の専門家の団体である労働弁護団や過労死弁護団等で研鑽を積み、時には講師等として労働事件の専門家を相手にして発表することもある。2019年の民事事件の新規受任事件に占める労働事件の割合は100%である。