試用期間中であっても、会社が自由に解雇や本採用拒否をできるわけではありません。

入社して1週間ほどで解雇されたという事案で、労働審判で月給の10か月分の解決金の支払いで退職するとの和解を行いました。

まず、これは労使双方で誤解されている方が多いのですが、試用期間中と言っても、自由に解雇(本採用拒否)できるわけではありません。試用期間であっても、労働者は前職を退職し、他の内定やそこまで行かなくても面接が進んでいる就職先を断って入社したわけですから、労働者の不利益は通常の解雇とほとんど変わらない極めて大きいものです。また、会社側からしても特別高給(年1000万とか)で幹部として雇ったという事案であれば、それなりの能力を期待する会社の期待も法的保護に値すると言え、会社の解雇が認められやすくなるのも致し方ないと思いますが、新卒の初任給とさして変わらない程度の給料の場合は、それ程高い能力を求めるのが間違いであって、労働者に問題があったとしても一から指導を尽くして育てて、それでもダメだった時の最終手段としてしか解雇は許されないというべきで、安易に解雇をゆるす理由はありません。そのため、多少判断基準は緩やかにはなるとは言われていますが、あくまで会社側が雇用を継続できない正当な理由を立証して初めて解雇(本採用拒否)が認められることになります。率直に言って、よほど高給の場合は別として使用期間中の解雇(本採用)の基準は解雇とほとんど変わらないという印象です。

入社後間もなくの無効な解雇は、弁護士の力量で解決金が大きく変わる可能性があります。

本件は、社長が雰囲気が気に食わなかったと言ったまともな理由が全くない解雇でしたが、それでも勤続期間が短いことから、労働問題を専門としない弁護士ですと、3~4か月程度で和解してしまうことが多いようです。

最近は私のところに既に別の弁護士に相談済みという方から、別の弁護士に相談したけど、あまりに理由のない解雇なので解雇は無効となる可能性が高いけれども、勤務期間が短いため、3~4か月程度ではないかと言われたという話をよく聞きます。

勤続期間が短いと言うのは、解決金の水準を考えるに際して、裁判所が金額を抑える要素ではありますが、それ以外にも様々な要素を考慮して解決金の金額は決まるものです。勤続期間が短いということはマイナスの要素ではありますが、決定的に不利な要素というわけではなく、それ以外の要素をこちら側に有利に持っていくことで、解決金の金額は大きく変わっていきます。

労働問題は経験がものをいう事件類型ですので、労働弁護団や過労死弁護団など、専門性をもって取り扱っている弁護士にご相談されることをお勧めします。

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このコラムの監修者

  • 増田 崇弁護士
  • 増田崇法律事務所

    増田 崇弁護士(第二東京弁護士会所属)

    2010年に増田崇法律事務所を設立。労働事件の専門家の団体である労働弁護団や過労死弁護団等で研鑽を積み、時には講師等として労働事件の専門家を相手にして発表することもある。2019年の民事事件の新規受任事件に占める労働事件の割合は100%である。