勤務時間中のネットの私的利用を理由とした解雇が無効であったとして、給与仮払いの仮処分決定を獲得しました

労働組合活動をきっかけに、労働組合の役員を辞任するよう圧力をかけ、その件について組合員の意見を求めるメールを勤務時間中に出したという理由で降格され、その後勤務時間中のパソコンの業務外のサイトを見たことなどを理由とした懲戒解雇された事案で、給料仮払いの仮処分決定を得ておりました。会社側から決定に対する異議が出ていましたが、先日、無事異議を棄却する旨の決定が出ました。

解雇から数年後の異議申し立ては認められるのか

本件では、度重なる会社の嫌がらせで精神疾患を発症していたため、申立まで解雇から既に数年経過していましたが、無事に仮払いを命じる決定が得られました。

一般的には、解雇後あまり長期間異議を出していない場合には、職場に戻る意思がないのではないか、退職に同意しているのではないかとして、解雇は有効と言えないとの判断であったとしても、解雇無効の訴えが認められないという判断がされることが時々あります。自ら若しくは弁護士や労働組合を通じて争う姿勢を示して交渉が続いていれば、提訴まで時間がかかったとしてもやむを得ないという評価にもなることがほとんどですが、全く何の動きがないのに半年程度大幅に過ぎると、そのようなリスクが生じます。

しかし、今回の件でも、また、以前勝利的な和解ができたに日本青年会議所の事案も、本人が体調不良で裁判を戦うことができないという事情を説明し、解雇後相当長期間経過していましたが、無事解雇無効を前提とした勝利的な和解や決定を貰うことができました。

本件については、あくまで仮処分段階での決定ですので、最終的な決着が着いたわけではありません。今後も本裁判や、示談できないかの交渉が続きます。労働者の早期かつ効果的な救済のために、今後も全力を傾けていきます。

勤務時間中のネットサーフィン・私的行為は正当な解雇理由となり得るか

なお、勤務時間中はもちろん仕事をするのが原則であり、おしゃべりやネットサーフィン、業務外のメールなどは基本的には時間外に行うものです。しかしながら、これらの行為を職場のコミュニケーションを円滑に進めたり、人間の集中力は限界がありますので、このような息抜きを適宜挟むことで、却って業務が効率化することを示す研究もあり、多くの職場ではある程度は黙認されているものです。従って、よほど度を越したというような事案で、たびたび指導を繰り返したにもかかわらずといった事案でない限りは解雇が認められません。裁判例でも1日1時間程度のネットサーフィンを理由とした解雇を無効としたものもあります。今回は解雇理由が無効であることはある意味明らかな事案でしたが、それ以外にも、争点となり得る問題があり、難しい対応を行いました。

精神疾患が絡む労働問題には、単に労災申請以外に、解雇や残業代など多様な労働問題があり、当事務所では労災以外についても多数の経験がありますので、是非ご相談ください。

解雇・退職勧奨全般に関してはこちらもご覧ください。

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このコラムの監修者

  • 増田 崇弁護士
  • 増田崇法律事務所

    増田 崇弁護士(第二東京弁護士会所属)

    2010年に増田崇法律事務所を設立。労働事件の専門家の団体である労働弁護団や過労死弁護団等で研鑽を積み、時には講師等として労働事件の専門家を相手にして発表することもある。2019年の民事事件の新規受任事件に占める労働事件の割合は100%である。