労災事故は、交通事故ではなく労災分野を専門とする弁護士へご相談ください

今年の受任状況の続きですが、これまで当事務所での労災事案はほぼ精神疾患関係でしたが、昨年末には1年ぶりで工事現場での転落事故について、上半期には数年ぶりに脳心臓疾患の過労死の労災申請を受任しました。

最近、労災事故の分野について、従前交通事故を中心に積極的に集客し、大量に処理する方針の法律事務所が、乗り出してきています。船井総研(最近弁護士業界向けのコンサルを熱心に行っているコンサル会社)などは交通事故と共通する論点が多く、単価も高いとして労災分野への進出を煽っているようです。しかし、労災分野についても、労働弁護団や過労死弁護団等に所属し労働事件について従前から取り組んできた弁護士にご相談されることをお勧めします。

労災事故を、交通事故ではなく労働分野の専門家に相談するべき理由

率直に言って、損害額、特に後遺障害の程度(後遺障害等級認定)が主要な争点である場合は、交通事故を大量処理するような事務所であっても、何とか処理することは可能な場合も多いと思いますが、その点だけ処理できれば足りる事案は決して多くありません。労災事故特有の問題をちゃんと処理できる弁護士に依頼しないと、本来獲得できた補償を獲得できないことになります。

労災事故特有の問題は何かといいますと、交通事故と違って、労災事故は事故態様や事故原因が激しく争われる事案が交通事故よりもはるかに多いということです。これは、労災事故特有の原因があります。

労災事故の処理には、交通事故処理のノウハウだけでは対応しきれないことが多くあります

まず、交通事故であれば、通常は強制加入の自賠責だけでなく、自賠責に加えて対人無制限の任意保険に加入しています。保険会社が基本的に損害賠償金を支払ってくれますので、加害者が負担しなければならない金額はそれほど多いわけではありません。そのため、敢えて責任逃れのために嘘をつく必要もありません。しかしながら、労災事故の場合、強制加入である労災保険はさすがに加入しているにしても、上乗せ補償に対応する保険に加入していることの方が少ない状況です。労災保険は自賠責と同様に損害額全額を保障しているわけではないのですが、交通事故における自賠責である労災保険は加入しても、交通事故における任意保険に当たる保険にまでは加入していないことがほとんどです。そのため、労災保険では保障されていない損害額の負担を逃れるために使用者が必死に嘘をつくことが珍しくありません。

次に、労災事故は労災申請すれば労働基準監督署が調査することになっていますが、労基署は極めて限られた人数で回している関係で、交通事故が起きた時の様に、すぐに飛んできてくれるわけではありません。交通事故の様に事故直後に労基署が駆け付けてくれて、現場の状況を写真撮影して保存し、その場にいた人間に聞き取りなどをすれば、安全対策の不備を隠したり、口裏合わせをすることも難しくなります。しかし、労災事故の場合は、後日、事故状況について会社側が報告書を提出させるだけということがほとんどで、労基署はよほど大規模な事故でもなければ、会社の出した報告書が一応整ったものであればそれ以上積極的な調査をしていないのです。そのため、会社側としては嘘をつこうと思えば嘘をつける状況と言えます。

さらに、労災事故は勤務中や通勤中の交通事故を除けば、建設関係や工場など危険な業務を行う業種のことがほとんどです。そのような会社の経営者は当然やらなければならない安全対策が何かということをよくわかっているのが通常です。しかし、安全対策を行うと費用がかかったり、作業効率が下がるため、敢えて安全対策をちゃんと行っていないわけです。つまり、何を隠さないといけないポイントなのかよくわかっているわけで、最初から一貫して嘘をつくことも簡単にできますので、非常に手ごわい相手となります。

また、証拠関係も基本的には会社が管理しているものがほとんどで、被害者側が入手できる証拠も限られるのが通常です。同僚はあの会社がいかにいい加減な会社か知っていると言っても、通常は会社からの報復を恐れて協力は得られないばかりか、積極的に会社の隠ぺい工作に協力するということの方が多いです。

当事務所は、困難な労災事件についても積極的に取り扱い、戦います

私が、過去に扱った事件でも、反対尋問で、会社側の主張との客観的証拠との矛盾を見つけて切り崩すことに成功し、辛くも勝利和解したというような事案が少なくありません。先ほど紹介した建設現場での転落事故も、会社は安全対策をしっかり行っていたと、労基署に虚偽の報告をしてるという事案です(どのように切り崩すかは現在進行形の事案でありますし、守秘義務もありますので、お話しできませんが、このような事案でも私は果敢に戦います。)。ほとんどが示談で解決する交通事故とは全く異質の事件ですので、プロへ依頼することが重要です。

このような、困難な事案が多い、労災事件は大量処理を志向する事務所に手に負える種類の事件ではありません。最初に申し上げたような、研鑽を続けているような弁護士を探すことをお勧めします。

P.S. 交通事故分野でも事故態様が争われると非常に難件となりますし、そのような事案で熱心に戦われて実績を残されている尊敬すべき弁護士も多数います(後遺障害の問題も、医学的知識が求められ極めようとすると奥深い問題です。)。交通事故を専門とする弁護士が全般的にレベルが低いと言っているわけでは決してありません。今回申し上げている交通事故専門の弁護士というのはそのような真のプロの弁護士ではなく、大量処理を志向するなんちゃって専門家のことです。