刑事事件(窃盗癖等の精神障害)の取り扱い実績について

当事務所は、労働事件にほぼ特化(取扱件数の約8割)しており、その中でもうつ病をはじめとした精神疾患及び過労死、過労自死の労災申請、損害賠償を中心としておりますが、残りの2割の状況についてご説明いたします。

当事務所では、精神障碍、知的障碍、クレプトマニア(窃盗癖)などをキーワードに、積極的に刑事事件も取り扱っております。

刑事事件は私選の依頼だけでなく国選事件なども取り扱っており、国選事件は法テラスが機械的に割り振っているため、特に私が専門とする福祉的・医療的な対応を必要とした事件に特化しているというわけではありませんが、刑事事件を起こす人の大半は福祉的・医療的な対応が必要があると言われています。そのため、私が担当することで、福祉的精神的な対応の必要性がある事件であると掘り起こし、効果的な弁護活動ができていると自負しております。

元々、私が現在扱っている精神保健福祉分野を弁護士としての使命としたいと考えるようになったきっかけの一つが、秘書給与詐欺事件で実刑を受けた山本譲司元衆議院議員の刑務所での体験を綴った獄窓記を読んだことでした。詳しくは獄窓記を読んでいただければと思いますが、当時も今も、刑務所が行き場のない障碍者の吹き溜まりとなっているという現実があります。障碍者の刑務所の入所率は障害がない方と比べて数倍では済まないと言われています。もって生まれた本人の責任とは言えない違いである障碍という事実で、刑務所に行かなければならないというのは許されない不公平だと強く印象に残りました。また、本来であれば、本人の利益という面でも当事者の福利の向上を使命とする福祉の分野が担うべきなのはもちろんのこと、厳重な警備がなされており極めてコストの高い施設である刑務所でそのような人を支えると言うのは不効率です。

知的障碍者の窃盗の再犯事件について、求刑を相場より大きく下回る判決を得ました

先日も、知的障碍を有する、窃盗の再犯の弁護を行いました。当職は、福祉職との連携等を行い、今後の環境整備について具体的なプランを提案する活動を行いました。

当該事件は保護観察付きの執行猶予中の再犯で、法律上再度の執行猶予が認められない状況であり、残念ながら実刑になってしまいましたが、通常検察官の求刑の8割程度が相場であるところ、55%と大幅に求刑を下回ったのは一定の成果だと評価してよいものです。

また、万引きの再犯の事案で、執行猶予中の再犯は原則として再度の執行猶予はないのですが、当職は医療的な対応を行うことで、再度の執行猶予を度々獲得しています。

 

 

このコラムの監修者

  • 増田 崇弁護士
  • 増田崇法律事務所

    増田 崇弁護士(第二東京弁護士会所属)

    2010年に増田崇法律事務所を設立。労働事件の専門家の団体である労働弁護団や過労死弁護団等で研鑽を積み、時には講師等として労働事件の専門家を相手にして発表することもある。2019年の民事事件の新規受任事件に占める労働事件の割合は100%である。