パワハラ・長時間労働で労災認定獲得
貸し切り車輛の運転手が精神疾患を発症した事件で、当事務所の増田崇弁護士が東京都内の労基署に労災申請した件で、今月、労働基準監督署で、労災申請を受けました。
本件は、100時間前後の長時間労働を行っていたことに加えて、再三に亘ってパワハラが加えられ、発症の直前には、先輩から胸ぐらをつかまれて、倒されるという暴行を受け、打撲等の傷害を受けていたことから労災認定されたものと思われます。
本件については、昨年の年初に発症後数か月で当事務所にご相談があり、昨年の内に東京地方裁判所で、仮処分手続きにおいて和解済みのため、詳細についてはこれ以上はお話しすることはできませんが、労災申請に先行させて会社との交渉を行いスピーディに和解成立させることができました。
労災を先行させるのが原則
一般的に、精神疾患で就労不能になった場合は、労災申請を先行させ、労災認定を得てから会社に対して労災では補償されない不足分(労災では慰謝料が支給されないほか、休業補償も全額支給されるわけではないため、支給されない部分が発生します。)を請求するのが原則です。
これは、様々な理由があり、労災認定を獲得できれば、裁判所で争う場合も、裁判外で話し合う場合も一度判断が出ていますので有利に交渉を進められるということもあります。また、労基署が労災申請によって調査することになりますが、最初に損害賠償を行ってしまうと、会社側も徹底的に防御を行うことになりますが、先に労災申請すれば、労基署がその権限を行使して有用な資料を集めてくれることもありますし(あまり期待しない方がいいのですが)、そこまでいかなくても損害賠償に比べれば素直に労基署の調査に協力する傾向があり、後から言い逃れがしにくくなるという傾向があるからです。加えて、精神疾患がいつ治るかは不明であることが多く、あまり早期に和解してしまうと、将来分の請求がしにくくなるからです。
早期の解決のため、会社との交渉を先行させることもあります
しかし、本件では、ご本人が早期の解決を希望されていたことに加えて、直後に救急車で搬送されているため、暴行の事実は明らかであり、また労働時間もシフト表がありかなりはっきりしていたことから、前記の損害賠償を先行させるデメリットも小さいと判断し、裁判所の仮処分手続きを利用して、会社との関係を早期に解決しました。
当事務所では、依頼者のご希望にできる限り沿った解決を行うべく、多様な手段で解決までサポートしております。
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このコラムの監修者
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増田崇法律事務所
増田 崇弁護士(第二東京弁護士会所属)
2010年に増田崇法律事務所を設立。労働事件の専門家の団体である労働弁護団や過労死弁護団等で研鑽を積み、時には講師等として労働事件の専門家を相手にして発表することもある。2019年の民事事件の新規受任事件に占める労働事件の割合は100%である。