前回に引き続き、使用者側から見た労働事件の話です(嘉納英樹・加藤新太郎「弁護士が知っておきたい企業人事労務のリアル」)。今回は労働組合、特に会社に元々ある労働組合ではなく、個人加盟ユニオンなどと呼ばれる、会社に労働組合がなく労働組合を作りたいと思った労働者や、会社とトラブルになった労働者の駆け込み寺となる、個人で入れる個人加盟ユニオンと言われる労働組合についての話しを紹介します。

「会社としては、相当腹をくくらなければならない、示談を強力に進めるべき、そういった案件だとお思います。(中略)労働組合の組合員の方は、企業のビルの前に立ちスピーカーで主張を述べビラを配る等の情報宣伝活動などいろいろな戦術をとって会社を揺さぶります。これらは労働組合の権利且つ合法な行為ですので、揺さぶられても会社として筋を貫くという相当の覚悟が必要です。人事労務屋として、安易に争いにもっていくことはあまりおすすめしません。(中略)通常の1体1、会社と個別の労働者との個別労使紛争とは違った意味のリスクを帯びると思います。」

「その会社に昔からある労働組合なら、だいたい会社の実情をわかっていますし、多くの大企業の場合は御用組合、第2人事部とさえも言い得ることもありますので、会社とうまく話し合いができると思いますが、そこでの問題点は、会社とうまく話し合いができるがゆえに労働者が頼らないことです。すなわち、労働者は、社内組合に事件をもみ消されるのではないか、会社と真正面から戦ってくれないのではないかと考え、外部のユニオンに行ってしまうということです。正社員でなければ社内の労働組合に入れない場合は、非正規の社員はそもそも外部の組合に行くことになりますが、正社員であってもそうした理由で外部に行くこともあります。結果論としては、社内組合と会社の中が良いのは良しあしということになります。」

と記載されています。御用組合なのも善しあしというのを使用者側が言うのはは非常に興味深いと感じました。

会社側の弁護士も述べるように、労働組合の応援があるというのは、仮にそれが社内に基盤を持たず、同僚からの応援が期待できない個人加盟ユニオンであっても、非常に意味のあることです。当事務所は労働組合と積極的に連携して高水準の解決やスピード解決を多数獲得した実績がありますので、是非ご相談ください。

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このコラムの監修者

  • 増田 崇弁護士
  • 増田崇法律事務所

    増田 崇弁護士(第二東京弁護士会所属)

    2010年に増田崇法律事務所を設立。労働事件の専門家の団体である労働弁護団や過労死弁護団等で研鑽を積み、時には講師等として労働事件の専門家を相手にして発表することもある。2019年の民事事件の新規受任事件に占める労働事件の割合は100%である。