労働判例1087号56頁(労働関係専門誌としては最も有名な判例雑誌である)に私が取り扱った残業代請求事件が掲載されました。

 

本件は,テレビのロケバスの運転手について,撮影中の待ち時間の取り扱が中心的な争点となり,待ち時間の認定については,必ずしも満足のいく結論ではありませんでしたが(なお,控訴審で1審をかなり上回る水準で和解しました。),待ち時間の点は当該事例の事実認定の問題に過ぎず,実務上重要な点は100キロ超の走行をした場合の走行キロ数に比例した手当てが残業代計算の基礎単価に含まれるとした点です。

裁判所はロケバスの走行距離はたまたま遠方でロケをしたか,近場でロケをしたかで決まるものであり,労働時間と比例して伸びるというものではないことから,いわゆる歩合給ではないとしました。

行政の通達では歩合給も残業代の対象になりますが,通常残業代125パーセントのうち100パーセント部分は歩合給に含まれており支払い済みとなるとされています(ただし,歩合給の取り扱いについての行政の見解についてそもそも議論があります。)。歩合給にあたるかで,金額が大きく変わってきます。 現在,成果に応じた給料の支払いを目指す方向での労働法制の改悪が政府により目指されています。

成果がでるか否かは様々な事情により決まるものであり,必ずしも労働者の側の努力でなんとかなるものではないため労働者の努力が評価されないという問題がありますし,労働時間の歯止めをつけにくいという問題もあります。

歩合給をめぐる取り扱いの判例が流動的な状況で,歩合給を限定するいい先例を作れたと考えています。

また本件は,就業規則がなく,所定労働時間の定めもない事案での計算方法を明らかにしたという技術的な点について参考になる事案です。