学習塾の元教室長の精神疾患が労災認定されました

以前の記事でも(http://utu-rousai.main.jp/column/561/)発表しておりますが、当事務所の増田崇弁護士が伊藤克之弁護士と共同して行っていた、神奈川県内で多数の学習塾を展開する株式会社ステップ(東証一部上場企業、本店所在地:神奈川県藤沢市藤沢602、代表取締役:龍井郷二氏)の元教室長の精神疾患について、労基署から労災認定されました。

異議申し立てをすることにより、未払い残業代の存在が認められました

小田原労基署は、残業代の不支給について検討せずに従前の支給額を基準に労災の支給決定を行っており、残業代について考慮していなかったため、支給額について異議申し立て(審査請求)を神奈川労働局にしていました。最近、特に東京都内の労基署では支給決定段階からサービス残業がないかを確認し、残業代を支給しない正当な理由なのかをしっかり調査して、本来支払うべき平均賃金の金額(給付基礎日額)を再計算してから、支給決定を行うことが増えていますが、従前は残業代の問題について検討していないで支給決定を出すことが多く、労基署で支給決定が出たら、労働局に給付基礎日額について、審査請求を行うというのが一般的な進め方でした。今回は都内の労基署ではなかったため、未払い残業代があることは明らかであったにもかかわらず、平均賃金の額について再計算を行っていなかったため、審査請求をしたところ、今月、神奈川労働局は労基署の賃金算定について取り消し、再計算を行うよう命じる決定を出しました。

「名ばかり管理職」への残業代不支給は犯罪行為です

ステップは教室長については管理職扱いとし、残業代を一切支払っていません(残業代の不払いは、犯罪行為です。)。

教室長については、一般の講師と同様の授業数を担当した上に、進路指導や生徒・保護者への進路指導なども行っていたのであり、出退勤の自由などないことは明らかでした。にもかかわらず、残業代を支払っていなかったのであり、ステップの対応は極めて悪質です。また、労災認定後も謝罪一つしていない不誠実な対応を続けています。

遵法意識が欠如したステップに対して、今後、単に本件の依頼者に関する補償を求めていくだけでなく、犯罪行為である、残業代不払いについて、他の労働者も含めた会社全体の是正を行うべく、労働局や厚生労働省等への申し入れ等もして、徹底的に会社の責任追及を行っていく所存です。

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このコラムの監修者

  • 増田 崇弁護士
  • 増田崇法律事務所

    増田 崇弁護士(第二東京弁護士会所属)

    2010年に増田崇法律事務所を設立。労働事件の専門家の団体である労働弁護団や過労死弁護団等で研鑽を積み、時には講師等として労働事件の専門家を相手にして発表することもある。2019年の民事事件の新規受任事件に占める労働事件の割合は100%である。