労災の申請や認定の状況については,毎年6月頃に,厚生労働省が前年度分をまとめて発表しています。
平成26年4月30日現在発表されているのは平成24年分までであり,それによると,平成24年度は
申請数 1257件(内自殺事案169件)
認定件数 475件(内自殺事案93件)
認定率 39.0パーセント(自殺事案45.8パーセント)
となっています。
平成23年までは認定率は30パーセント前後で推移していましたが,
平成23年12月26日に従前の判断指針が廃止され,認定基準が発表されたことにより,認定基準が若干緩和されたことにより,救済が進んだものと思われます。
しかし,そもそも勤労者の精神疾患の有病率は1000万人との推計もあるところです。自殺についても,勤務問題を理由とする自殺が3000人弱とする統計もあり,救済されているのはまだまだ氷山の一角といえます。
30代,40代が一番認定件数は多いですが(150件前後),20台も109件と非常に多く,どの世代にも過重労働が蔓延していることが分かります。
また,地域的にも顕著な特徴は見られず,一般的にはのんびりしたイメージがある沖縄県などでも認定されています。
※追記
令和1年に本ホームページの大幅な改訂作業をしておりますので、最近の状況について、追記します。
平成23年に認定基準が改訂されたことに伴い、社会の問題意識が急激に高まったこともあり、申請数は毎年増えています。しかし、認定率については、順調に改善しているという状況ではありません。
平成24年頃から精神疾患の労災認定率が上がったものの、平成29年ころから再び低下し、現在では3割強に後退しています。この背景には、労働時間に関する認定を労働基準監督署が厳格化しており、実際の労働時間より大幅に過少に認定していることが挙げられます。例えば、片道数時間かけて自ら運転して遠方の取引先に営業に行っており、拘束時間は12時間を優に超えているにも関わらず、実際に客先で営業活動を行った数時間しか労働時間として認めないなどの、明らかに問題のある事案が続発している状況です。私の所属している過労死弁護団などでも厚生労働省への働きかけなど、不当な取り扱いの変更に対しては警鐘を鳴らすとともに、国会議員等も含めて働きかけを行っているところです。
認定理由や,労働時間数別の分析についてはこちらをご覧ください。
→労災申請・損害賠償請求をお考えの方はこちらもご覧ください
このコラムの監修者
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増田崇法律事務所
増田 崇弁護士(第二東京弁護士会所属)
2010年に増田崇法律事務所を設立。労働事件の専門家の団体である労働弁護団や過労死弁護団等で研鑽を積み、時には講師等として労働事件の専門家を相手にして発表することもある。2019年の民事事件の新規受任事件に占める労働事件の割合は100%である。