経営者は労働者でないので,労災にはならないのが原則です。

もっとも,業務委託契約についてお話したのと一緒で,労働者か否かは名目ではなく,実態で判断します。なぜなら,名目で判断するとすれば,労働法による労働者の保護は容易に脱法が可能となってしまい,労働法規を定めた意味がなくなってしまうからです。

では,具体的にどのように労働者かどうかは判断されているのでしょうか。裁判例は明確な基準を示しているわけではなく,多数の要素を総合判断しているようです。

まず,代表取締役からの指揮監督の有無や内容が問題となります。名目上取締役となっていたとしても,例えばわずかな金額でも一々代表取締役の決済を仰がなければならないような場合には,指揮監督を受けており,業務上の意思決定を行う立場ではないときには労働者性が肯定される要素となります。

次に,時間的場所的拘束性の有無が問題となります。他の従業員と同様に時間や場所を拘束されているのであれば,労働者性を肯定する要素となります。

また,職務の内容も問題となります。一般の従業員と同様現場仕事をしているというような場合には労働者性を肯定する要素になります。

報酬の金額と性質も問題となります。会計上賃金として支給されている場合には,従業員兼務の取締役であると判断する要素となりますし,一般従業員と金額がほとんどかわらないというのであれば労働者性を肯定する要素となります。

また,当初は従業員として入社した方の場合ですと,上記の事情が取締役になるまえと後でどのように変化したかが重要な要素となります。