審査請求の手続き自体は難しくありません

労働基準監督署で業務外決定が出た場合には,業務外決定を知った日から6ヶ月以内の期間に不服の申立てを行うことができます。労基署の業務外決定に対して行える不服申立てを審査請求といいます。

審査請求は都道府県ごとに設置されている労働局宛に行います。書式は労働局のホームページなどにも公開されていますが,住所や業務外決定を受けた日付,不服の内容など形式的な事項を記入すればよく,審査請求の手続き自体はそれ程難しいわけではありません。また、特に費用が必要なわけでもありません。

労基署の資料は別途個人情報開示手続きで取寄せましょう

なお,労基署の担当者は判断の理由を口頭で簡潔に説明してくれることはありますし,審査請求を行うと不服申し立てをされた労基署は決定に至った理由の要旨を記載した書面を労働局に提出しますし、その写しは労働局から請求者に送付されてきます。しかし、これはあくまで要旨(例えば、請求人がsっ油調する長時間労働は調査の結果認められなかった等と簡潔に記載されているだけで、具体的に誰がどのように言っていて、客観的な証拠としてどのようなものがあり、どのような調査したなどと言ったことが記載されているわけではありません。)が記載されているわけではなく資料そのものが開示されるわけではありません。、決定の資料は当然に開示してくれるわけではありません。個人情報開示手続きに従って資料の開示を請求し,判断の理由をしっかりと読んで追加の立証や反論を行うことになります。個人情報開示では,使用者側の供述調書などは黒塗りになっていることが多く,十分な開示を受けられないことも留意してください。

審査請求でも残念な結論な場合は再度不服申し立てできます

審査請求でも業務外となってしまった場合には労働保険審査会に再審査請求を行うことが出来ます。審査請求を棄却する決定を受け取ってから60日以内に再審査請求は行うことができます。再審査請求を行うこと,労基署が集めた資料が開示され,郵送されてきます。

再審査請求を行ったが,業務外となってしまった場合,若しくは再審査請求を行ってから3ヶ月以内に裁決がでない場合には,裁判所に訴訟提起することができます。なお,裁決がでる前に訴訟提起した場合は再審査請求の手続きが中止されるわけではなく,労働保険審査会の再審査手続きと訴訟が並行して進められることになります。

もっとも,労基署で一度業務外の判断が出てしまったのを覆されることは5パーセント程度といわれており,必ずしも可能性が高いわけではありません。その理由についてはこちらもご覧ください。

単に不服申し立てすれば、実態を解明してくれるはずだなどと期待していても、ほとんど意味はありません。労基署の決定が誤りであることを労働者の側で立証するつもりでなければ、結論はほぼ変わりませんので、経験豊富な弁護士にご相談することが必須と言えます。

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このコラムの監修者

  • 増田 崇弁護士
  • 増田崇法律事務所

    増田 崇弁護士(第二東京弁護士会所属)

    2010年に増田崇法律事務所を設立。労働事件の専門家の団体である労働弁護団や過労死弁護団等で研鑽を積み、時には講師等として労働事件の専門家を相手にして発表することもある。2019年の民事事件の新規受任事件に占める労働事件の割合は100%である。