労災給付や上乗せ補償は非課税
結論からいいますと,労災保険の休業補償や休業補償の上乗せ給付(損害賠償金),慰謝料には税金は掛かりません。そのため、休業補償が平均賃金の8割しか出ないと言っても、給付額が手取り額となりますし、残業代も平均賃金の算定に含まれるため(サービス残業となっていて実際に支給されていなくても、労災の休業補償では認められます。ただし、労基署の支給決定では漏れていることがよくありますので、残業代が考慮されているかは注意して確認し、必要に応じて審査請求を出すことが重要です。)、生活費を確保するという観点からは十分な金額となることがほとんどです。
損害賠償は原則非課税、しかし休業補償は原則として・・・
【原則】 交通事故など他の分野でも一緒ですが,原則として損害賠償として受け取った金銭には税金は掛かりません。 例えば,100万円のものを壊されたとして,損害賠償として100万円を受け取ったとして,被害者は現金は受け取っていますがそれは物がなくなったかわりに現金をうけとっただけで,特段利益が発生しているからではないからです。
【例外】 ただし例外として,自動車が店に突っ込んでしまい,店の営業が1ヶ月できなかった場合に営業利益の補償をするというような場合は課税されます。これは本来であれば得られた利益は課税されるのだから営業補償として受け取ったからと言って課税されないのはおかしいという理由からです。
【例外の例外】 しかし、逸失利益に課税されるという例外には,さらに例外があります。交通事故や労災事故のように,心身にくわえられた損害についての逸失利益には課税されないことになっています。これは,心身を故障してしまった方に課税するのは忍びないという社会政策上の配慮から例外として定められたものです。
従って、労災で怪我や病気になって、休業補償を受けたという場合は、本来であれば、給料は課税対象ですので、課税されるのが原則ですが、社会政策上の配慮で例外とされているため、非課税ということになります。
ようするに,慰謝料は原則どおり課税されず,休業補償や休業補償の上乗せ給付は例外の例外によって課税されません。
社会保険料は会社に在籍し続けているか、退職しているかで大きく変わります
まず、まだ会社に在籍している場合は、厚生年金等に加入することになりますが、その場合社会保険料は休職する直前の時期と同一と理解してください。そのため、ある程度収入があった方の場合は、社会保険料もそれなりに高額となります。
一方,退職している場合は、国民年金や国民健康保険に加入することになります。国民年金は通常通り保険料を支払わなければなりませんが(免除の手続きはありますが、将来の年金給付額が減少してしまいます。国民年金は保険料だけでなく国からもお金を入れて維持されているものです。多少条件が悪くなっているといっても、民間の保険ではありえないコスパのよい保険ですので、休業補償を受ければ支払えますから、納付することをお勧めします。)、国民健康保険については,課税収入の金額が低くなる関係で相当程度保険も免除されたり相当程度安くなります。具体的な金額は計算方法はまちまちなので,加入されている市区町村にお問い合わせください。
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このコラムの監修者
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増田崇法律事務所
増田 崇弁護士(第二東京弁護士会所属)
2010年に増田崇法律事務所を設立。労働事件の専門家の団体である労働弁護団や過労死弁護団等で研鑽を積み、時には講師等として労働事件の専門家を相手にして発表することもある。2019年の民事事件の新規受任事件に占める労働事件の割合は100%である。