Q:社会保険に会社が加入してくれないのですが、傷病手当金を受給できるでしょうか?
うつ病で働けなくなったのですが、生活費の確保についてのページで、まずは傷病手当金の支給を受けるべきとの記事を読みました。私はフルタイムで働いていたのですが、会社が正社員ではないからという理由で健康保険に入れてもらえず、国民健康保険に加入していたのですが、私も傷病手当金はもらえるのでしょか?
A:そのままでは、支給を受けるのは難しいですが、あきらめる必要は全くありません。
傷病手当金は働けないことさえ医師が証明してくれれば、1年半給料の3分の2が補償してもらえるというもので、支給条件が緩く、支給も労災や障害年金が長期間審査に時間がかかることに比べると、比較的迅速ですし、いざというときに便利な制度です。
しかしながら、国民健康保険の加入者には原則として傷病手当金の制度の適用がありませんので、会社の健康保険に加入していない場合はそのままでは傷病手当金を受け取ることはできません。
しかし、法人の場合は正社員の4分の3以上の時間及び4分の3以上の日数働いている場合には雇い主には健康保険に加入させる義務があります(4分の3を満たしていなくても501名以上の企業の場合には週20時間以上働いていれば、基本的に加入義務が発生しますし、現在は中小企業にも加入義務を拡大する動きがありますので、詳細は厚生労働省のホームページなどでご確認ください。)ので加入しないのは違法行為です。ご相談のケースもフルタイムで働いていたとのことですから、会社はあなたを加入させる義務がありました。
そして、加入していなかったとしても遡って2年間は加入することができます。会社が遡って加入してくれれば、傷病手当金も受給できます(そのほかの要件を満たしていなければならないのは当然です。)。まずは、年金事務所に、健康保険に加入させるよう指導するよう申し入れを行いましょう。遡及加入の期間は2年間で、刻刻と加入できる期間が過ぎて行ってしまいますので、早急に年金事務所にご相談に行ってください。
また、社会保険に未加入の場合には、雇い主は処罰される可能性がある他、雇い主が社会保険に加入しなかったことにより損害が生じた場合は、労働者は会社に対して損害賠償を請求することもできます(奈良地判平成18年9月5日)。
そこで、加入しないことは犯罪行為であること、あくまで加入しないというのであれば、加入しないことによって発生した傷病手当金の支給が受けられないという損害は会社に対して損害賠償請求すると伝えて、遡及加入するように会社に直接交渉してもいいです。
また、自分一人でうまく交渉できないときは年金事務所や労働組合を通じて交渉を行うことも検討してください。
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このコラムの監修者
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増田崇法律事務所
増田 崇弁護士(第二東京弁護士会所属)
2010年に増田崇法律事務所を設立。労働事件の専門家の団体である労働弁護団や過労死弁護団等で研鑽を積み、時には講師等として労働事件の専門家を相手にして発表することもある。2019年の民事事件の新規受任事件に占める労働事件の割合は100%である。