東芝事件(最判H26.3.24)では,前年度の年収,つまりボーナスや残業代を含む金額,をベースに働けなかった期間の逸失利益を請求しました。裁判所も前年度の年収をこれを前提に損害額を計算した判断を是認しています。

交通事故の事件など通事故の事件などでは前年の源泉徴収表に記載されたいわゆる額面の年収がベースで損害額を計算するのが一般的です。労災事件についてのみ,基本給しか認めないとする理由はないですので,当然の結論と思います。

もっとも,損害賠償という形で請求した場合には,労働者の側に健康管理や体質的な要因があったとして,何割か減額されてしまうことがあります(法律用語では過失相殺といいます。)。どのような場合に過失相殺されるかは未だ判例の基準は流動的といわざるを得ませんが,上記の東芝事件最高裁判決は安易に過失相殺する最近の下級審の流れを食い止める画期的なものです。

 

一方,給料(基本給)という形で請求することも可能です。実際には働いていませんが,会社側の落ち度で働けないわけですから給料の請求権はなくなりません。給料は労基法上全額支払いの義務がありますので,過失相殺ということはありませんが,実際に働いたことを前提とする残業代の請求などは困難でしょうから,過失相殺されない限りは損害賠償請求した方が得でしょう。

 

東芝事件の東京高裁判決では,年収ベースの金額から過失相殺して3割減額したところ,基本給の方が高いので,基本給を認めるという判断(労災保険で休業補償は出ていますので,ほとんど逸失利益は認められないことになります。)をしています。