相談前
10年以上外資系の会社に勤めていましたが、日本支社の責任者の交代などにより徐々に立場が悪くなり、退職勧奨を受けました。会社の提案してきた提示(数か月分程度の補償)を受け入れなければならないのでしょうか?
相談後
(経過1)弁護士名で、退職に関する交渉は全て弁護士を通すようにと通知を送ったことにより、退職勧奨を受けずに済むようになりました。
(解説)弁護士が受任すると会社は弁護士を通じて交渉することになり、本人と直接交渉するよう無理強いすれば違法行為となりかねないからです。そして、通常、退職勧奨を受けることに慣れた方など滅多にいませんから、退職勧奨を受けたた労働者は不安で孤独な気持ちになりますし、冷静な対応など困難ですし、そこに付け込んで退職に追い込むのが人事の腕の見せ所です(一般的には、強引に強要するなどではなく、なだめて透かして、会社にいる場所がないと思い込ませるというのが常套手段となりますが、法律上強制的に会社から追い出す、つまり解雇が認められることなどかなり限定的なケースに限られます。)。しかしながら、弁護士が付くことで、そのような手法は取れなくなり、交渉は優位に進みますし、自分自身の評価そのものに関する交渉を直接しなくてよくなることで精神的ストレスは激減します。
(経過2)その後、会社からの反応が遅く、時間はかかりましたが、最終的に表題の通り満足できる金額の上乗せ退職金を貰って退職となりました。時間をかけてじっくりと交渉したことで、結果的に高水準の和解となりましたし、結果的に再就職のための時間も十分確保できました。
(解説)この件では、会社側の動きが鈍かったという事情がありましたが、ご本人の再就職先が決まっていなかったことから、結果的に再就職活動と会社との交渉に十分な時間をかけることができました。会社は退職するまで今まで通り給料を支払わなくてはならないため、交渉を急ぐのが通常で、時間をかけた方が譲歩を引き出しやすくなります。しかし、会社は所詮たくさんいる従業員の一人に過ぎないので多少こじらせても致命傷になることはないという余裕があります。一方で、労働者も次が決まっていればできるだけ早く解決したいと思うのが通常です。そうなると、十分な譲歩を引き出せていなくても交渉をまとめるしかなくなってしまいます。本件では次がなかなか決まらなかったことが逆に追い風となって高額の解決金での和解となりました。
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このコラムの監修者
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増田崇法律事務所
増田 崇弁護士(第二東京弁護士会所属)
2010年に増田崇法律事務所を設立。労働事件の専門家の団体である労働弁護団や過労死弁護団等で研鑽を積み、時には講師等として労働事件の専門家を相手にして発表することもある。2019年の民事事件の新規受任事件に占める労働事件の割合は100%である。