【受任に至る経緯】

Aさんの息子さんは建築現場で転落事故を起こし、亡くなってしまいました。会社側は責任回避的な言動をとるばかりで信用ができず、また適切な補償をして欲しいと思いますが、いくらが適切なのかもよくわからず、地元の弁護士の紹介で当事務所に相談にいらっしゃいました。

【受任後】

Aさんから息子さんのお話を聞くと、判断が難しい点が多々ありました。
まず、息子さんは本人なりに頑張ってはいるものの、病気を抱えており、安定して就労できている状態ではありませんでした。そのため、機械的に前年度の収入金額を前提とすると慰謝料は別として逸失利益はほとんどないという状態でした。
また、事故態様についても争いがあり、建築現場での経験が浅く、またその人柄から指示もなく勝手に動いたという会社の弁解は到底信頼できるものではなく、息子さんの死亡の真実を知りたいと強く希望されていました。
まず、無職者に関する交通事故等の裁判例を調査し、息子さんは別の会社で翌月から働く予定で、就職先の内定を得ていましたので、その会社に給料の支給状況等を弁護士会照会で調査し、就職先での収入予定額を前提に請求することにしました。
事故態様についていろいろ資料を調査しましたが決め手がない中で、息子さんが経験が浅く指導を行うべきであったという点を強調したところ、元請け会社もこちらの提案する過失割合に近い条件まで譲歩し、和解することになりました。真相解明をというAさんのご希望については必ずしも添える結果ではありませんでしたが、裁判をしても真相が解明できるとは限らないこと、転落事故では数割程度の過失相殺をされることが多いことを考えると有利な条件であったことから、Aさんとしても納得できる解決となりました。

【ポイント】
死亡事故について適切な金額交渉をするためには、弁護士の知識経験が必須です。加害者である雇い主やその代理人の弁護士はもちろん保険会社もあなたのために動いてくれるわけではありません。最低限の支払いで円滑に事件を解決することこそ、彼らの役割であり、被害者のために動くという存在ではありません。被害者のために動いてくれるのは、自分が依頼した弁護士だけです。まずは、弁護士にご相談されることが重要です。

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このコラムの監修者

  • 増田 崇弁護士
  • 増田崇法律事務所

    増田 崇弁護士(第二東京弁護士会所属)

    2010年に増田崇法律事務所を設立。労働事件の専門家の団体である労働弁護団や過労死弁護団等で研鑽を積み、時には講師等として労働事件の専門家を相手にして発表することもある。2019年の民事事件の新規受任事件に占める労働事件の割合は100%である。