小規模な飲食店をワンオペ(ただし、会社側は争っています。)で運営していて、心疾患で突然死された方の労災申請について、労働局で逆転、労災認定されました。
被災者は、週6日朝10時過ぎから24時前後まで1日14時間程度勤務しており、当然労災認定されるべき事案でした。ところが、労基署は1日4時間から7時間休憩があったと認定し、業務外としました。
当該事案では、当方は、休憩時間はせいぜい1時間程度、それすら、ワンオペであり、予約電話への対応や仕入れの食材の配送の受け取りなどで、実際には完全に業務から解放されているわけではなく、手待ち時間(作業はしていないが、必要であればいつでも対応できるよう待機している時間)はあったにしても休憩時間はなかったと主張していました。
ところが、労基署は、会社側が作成した、売り上げの状況等から労働時間を推定したとする表をなぜかそのまま採用し、店の営業時間中も休憩時間をとっていたという意味不明な認定をしました。
当職は、並行して行っていた損害賠償で、会社の主張の根拠を問いただし(結局具体的な根拠は全く回答がない状況が続いています。)、また、ラインやメールでのやり取りから、被災者がワンオペであり、営業時間中の休憩などありえないことを主張しました。その結果、休憩時間は1日3時間(昼の営業終了の2時から夜の営業開始の30分前の2時間30分と営業時間中の30分)と修正され、残業時間が月80時間を超えたため、業務上と認定されました。
外食産業は非常に過酷な労働環境が蔓延しており、店によってかなり様々とはいえ、1日1時間の休憩すらまともに取得できないという話も珍しい話では全くありません。確たる証拠(休憩時刻がタイムカードやシフト表である、ラインやメールのやり取りなど勤務当時作成された資料など)もなく1時間を超えた休憩時間を認定するということ自体、実態を無視した非常識な認定と言わざるを得ません。
この件では、月300時間以上という異常な長時間拘束されていたため、何とか労災認定されましたが、労基署は非常識の塊であるという前提で業務を行わなければならないという気持ちを新たにした事案でした。
このコラムの監修者
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増田崇法律事務所
増田 崇弁護士(第二東京弁護士会所属)
2010年に増田崇法律事務所を設立。労働事件の専門家の団体である労働弁護団や過労死弁護団等で研鑽を積み、時には講師等として労働事件の専門家を相手にして発表することもある。2019年の民事事件の新規受任事件に占める労働事件の割合は100%である。