労災申請・損害賠償
長時間労働・パワハラ・セクハラ・過重なノルマ・クレーム対応・退職勧奨など仕事のストレスにより発症した精神疾患(過労死、過労自死を含む)は労災保険制度の認定対象となります。
精神疾患の労災申請数及び認定数ともに年々増加していますが、精神疾患(うつ病、双極性障害、適応障害、身体表現性障害、自律神経失調症、不安障害、統合失調症などほとんどの精神障害が問題が対象疾患です。また、精神疾患による休職や後遺障害だけでなく自殺も含みます。)は労災補償の対象となっています。
労災と認定されるかは職場を管轄する労働基準監督署が、厚生労働省が作成した各ストレスが生じる出来事を分類し一覧表があり(「心理的負荷による精神障害の認定基準」の別表の「業務による心理的負荷評価表」に具体的な各出来事の類型が列挙され、各類型ごとの平均的なストレスの強度及び修正する要素を「強」「中」「弱」の3段階で一覧表にしています。)に照らして調査し、極度のストレスである「特別な出来事」か「強」い業務上の心理的負荷要因が認められば業務上と判断します。どのような場合に強い業務上の心理的負荷要因があるとして労災と認められるかを以下で解説していますが、なんといっても残業時間が重要であり、月の残業時間が80時間を超える場合は8割程度で労災認定(業務上認定)が得られているとのデータが公表されています。
認定基準は、徐々にですが救済範囲を広げる改正を繰り返しており、令和5年(2023年)9月に改正されたものが最新のものになっています。
労災認定された事案の半数は長時間労働(残業60時間以下)がない事案ですので、長時間労働がなくてもあきらめる必要はありません。
残業(労災の認定基準では、所定労働時間が何時間かは関係なく、1日8時間週40時間を超える労働に従事した時間外労働を残業として扱います。)があまりない事案でも多数(認定された件数の半数程度は60時間以下の事案です。)の案件で労災認定されおり認められる可能性は十分ありますのであきらめる必要は全くありません。認定基準の一覧表を見ればわかりますが、長時間労働以外のかなり多数の出来事について強や中(2つ以上あれば約半分は総合評価で強に修正されます。)と評価されるという仕組みになっており、約10年ごとに行われる認定基準の改訂で、毎回出来事は補充されています(例えば、直近の2023年の見直しではカスハラについて評価に追加されました。)。
ただし、「業務による心理的負荷評価表」では「強」と記載されている要件に該当していても(私の目から見るとしばしば些末な、しかも「業務による心理的負荷評価表」に記載されておらず関連性が乏しい)理由をつけて「中」もしくは「弱」と下方修正して評価されることも多く、長時間労働がない事案での認定率はかなり落ちるというのが現状です。また、上司や同僚によるセクハラやパワハラなどのハラスメント、質的に困難な仕事内容による負荷、転勤や出張なども程度と証拠関係によりますが、労災認定が得られたケースも少なからずありますので、まずはご相談ください。短時間の無料電話相談で、本格的に相談した方がよい事案か、どのような手続きが適切かをご案内しております。
長時間労働がない事案では、同僚の協力が重要となります。現在も勤務している同僚は会社に対する遠慮から正直に話してくれないことがありますので、退職済みの同僚の協力が得られるかが重要なポイントとなってきます。
労働時間の立証方法は限定されていません。タイムカードがなくてもあきらめる必要はありません。
労働時間の立証に際して、会社も把握しているタイムカードや始業終業時刻が記載された業務日報はもっとも信用性が高い証拠と言えます。しかしながら、タイムカードや日報がなければ(もしくは、定時や1時間程度の残業後はタイムカードを打刻してからサービス残業をしていたとしても)労働時間の立証ができないというわけではありません。
労働時間の証拠としてよく用いられるのが、まず業務上のメールやチャットの送受信時刻(特に送信時刻)です。また、家族との今から帰る旨のメールやチャットもよく用いられます。また、パソコンのログが残っていないかも早めに確認すべきです。パソコンのログはデータ量が大量なので早めに確認しないと消失してしまうからです。
その他にも、警備記録や入退館記録が記録されている資料があれば、それは有力な証拠になります。スイカの履歴も定期券利用区間内は残りませんが、それ以外(定期券を購入していなかったり、出張などで区間外を利用した場合)であれば記録が開示できることが多いです。さらに、最近ではスマホのGPSが立証の決め手となることもあります。
労災認定されれば、手厚い休業補償が期間制限なく受けられます。
労災認定されれば、発症直前の平均賃金の8割が補償(休業補償給付)されます。しかも、この平均賃金は実際に支払われているか否かに関わらず残業代(サービス残業)も含まれますので、長時間労働がある事案であれば補償額は相当高額になります(ただし、年齢別で上限額は決まっていますので、月収が100万円を超えるなど相当の高収入の方の場合は今まで通りの生活を続けるのは難しいです。)。しかも、休業補償給付は非課税ですので、8割といっても手取り額としては従前とそれほど変わらないということになります(なお、社会保険は会社に在籍中であれば発症直前の時期と同額を支払う必要があります。)。
しかも、休業補償の補償期間は特に制限がなく、基本的には治るまで補償が受けられます。5年以上補償を受けている方もたくさんいますので、安心して治療に専念することができます。また、医療費も全額補償(療養給付)されます。
ただし、労災保険制度で受けられる後遺障害(治療を尽くしてこれ以上の治療が無意味という段階(症状固定)に至ったが、それでも残っている症状を後遺障害といいます。)への補償はかなり低額であり、損害の大部分は会社に対して請求してくださいという制度設計となっています。
会社の協力が無くても労災申請は可能です。
労災申請のほとんどは会社の総務人事や会社の社労士が手続きを行っています。職場での事故によるケガや社用車での移動中の事故などであれば労災であることは明白であり、会社も通常争いませんので、会社にお任せしてしまうことが通常です。しかしながら、会社の協力は必須ではなく、会社が協力を拒んだとしても、その旨を記載すれば、労災の申請自体は難しいことではありません(申請した結果労災と認められるかはともかくとして)。
病気になったのが大昔でも時効だと諦める必要はありません。精神疾患の既往歴があっても必ずしもあきらめる必要はありません
精神疾患の既往歴があっても必ずしもあきらめる必要はありません。単に過去に治療歴があったというだけで、過去の精神疾患からは回復しており通院や治療はしていないのであれば、認定にはほとんど影響がありません。また、通院や服薬を継続していたとしても、一定期間安定しており通常の勤務を継続できていた場合は、新たな発病として扱うとしていますので、あきらめる必要はありません。

労災保険では損害全額が保障されるわけではありませんが、休業補償の不足分や慰謝料は会社に対して損害賠償請求できます。
労災では、慰謝料は支給されませんし、平均賃金の8割を超える部分や、ボーナスについては考慮されません。しかし、これらについては勤務していた会社に対して損害賠償請求することができます。
なお、給料の補償については、2割は見舞金的な性質のため相殺されません。つまり、10割から支給済みの8割を差し引くのではなく、6割のみ差し引いて請求できます。
ただし、残業代については全額損害賠償の計算の基礎となる収入として算入するのは制限(45時間分まで考慮するなど)を受けることが多いです。
病気の労災申請は労基署の申請段階から弁護士が必須です。労基署は労災認定しようという視点で調査してくれるわけではありません。また、症状固定とされないためにも弁護士がいた方がよいです。
業務により生じた病気の労災についての知識経験が乏しい弁護士は、労災申請は自分でできるから自分でやってください、労災認定されたら会社への損害賠償をやります、という助言をすることがありますが、このような助言を信じてはいけません。
労災事故であれば建築現場で事故が起きたとか、会社の車を運転中に事故が起きたといったものが中心ですから、労災であることが客観的な事実関係から明らかです(例えば、救急車が工事現場にやってきたというケガの事案で労災でないと言い張るのはよほどの事情がない限り無理でしょう。)。また、労災申請の手続き自体は裁判などと違って、そこまで難しいわけではありません。従って、弁護士を選任する必要性はそれ程高くありません。被災者や家族が申請することもできますし、会社の方で対応してくれることも多いでしょう。
しかし、脳心臓疾患や精神疾患など病気は労災であるかは本人にとってはともかく、第三者の目には明らかではありません。精神疾患に至る経緯は個人によって様々であり、比較的強いストレスでも発症しない場合もあれば、比較的弱いストレスで発症する場合もあり、個体差によって発症しやすさは影響されます。また、人生において遭遇するストレスは仕事以外のプライベートのものも多数あります。そのため、強いストレスが証拠で認めさせない限りは、個体側要因がメインで発症したつまり仕事のストレスがメインの原因で(相対的有力原因とはいえない)発症したわけではなく、精神障害となっていることは認められるがプライベートな理由や業務上のストレスも通常人なら発症すると言えるほど強いものではなく本人の元々もっていた脆弱性が主たる原因として発症した可能性も否定できないとして(労災であることの立証責任は労働者にありますので、本人の脆弱性が原因であると積極的に認定できなくても業務外となってしまいます。)、労災の補償対象外となってしましまいます。労災の申請手続き自体は素人が独力で行うこともできなくはありませんが、労災と認めさせるのは別問題です。
業務が原因でなく病気になる人はたくさんいますので、その区別は傍からは明らかとは言えません。しかも、ほとんどの場合、会社は労災認定されると損害賠償請求を受けますので、労災認定されまいと必死に抵抗してきます。労災認定が得られるかどうかこそが、この種の事件の最大の山場です。労基署はタイムカードなど定型的な資料について提出するように会社に要求はしますが、会社が(実際はあっても)ないと弁解すれば、それ以上突っ込んで要求してくれるわけではありません。会社の必死の弁解に労基署が流されないように、申立の段階で「この件は労災だ、きっちり調査しなければ」とどこまで先入観を植え付けられるかで勝負の過半は決まります。また、一度労働基準監督署で業務外の認定が出てしまいますと、行政は自ら下した判断の誤りをなかなか認めませんので難易度が飛躍的に上がります。そのため、労災申請前から弁護士が関わることが極めて重要です。
また、休業補償は手厚いですが後遺障害(これ以上の治療が無効という段階に至っても残っている症状)に対する保証は極めて手薄です。会社に対して請求しても会社に支払い能力がなければ無駄になりますし、かなりの時間と労力が必要となります。他方で、精神疾患では、いつが症状固定(治療終了)かは、一般的なケガよりもあいまいですので、早期に休業補償を打ち切りとさせないためにも弁護士の存在が必要です。
当事務所の弁護士は労災疾病の事案では特筆すべき実績があります。
当事務所の実績については、弁護士紹介のページをご覧いただければと思いますが、労基署段階での認定はもとより、通常困難とされる行政訴訟での逆転勝利判決(労災分野では全国で年に数件程度しかない)を含む、逆転勝利を毎年のように獲得するなど、この分野では特筆すべき実績をあげつづけています。
労災に関連したびたび起こる問題点についての詳細な解説や、解決事例は、こちらでご紹介していますので、併せてご覧ください。