ここ,1,2年の間に,単独事件で裁判官と協議していて

裁判所の示した見解に私が反論すると

「合議した結論ですから」

と言って,話を打ち切ろうとされるということが数回ありました。

 

裁判所は最高裁を除いてどんな大事件でも3人で決めます。裁判所の所長や最高裁の決裁を得る必要はありません。わずか3人で再協議するだけの話ですから(数万人の組織なら一度決まったことは簡単に動かせないというのもまだ分かりますが),私の話をしっかり聞いて,再検討すればいいだけの話で(結論が変わるかはともかくとして)何の理屈にもなってないだろと思いますが,まあ合議事件は他の裁判官と再協議しなければならないのは事実なので百歩譲ってよしとしましょう。

しかし,単独事件でそれはないでしょ。

憲法をひくまでもなく,裁判官は法と良心のみに従い独立して職権を行使すべき立場です。単独事件ならその裁判官が自分の考えに従って判断するだけで,他の裁判官は口出しする権利は一切ないのです。

判断に迷った際に同僚などと議論し参考とするのは(あくまで参考にとどめることが前提ですし、求められてもいないのに、個別事件に口を出すのは、特に上席の裁判官が行うべきことではないと思いますが)軽率な判断を防止することにもなり当事者にとっても有用で,否定されるようなものではありません。

しかし,同僚との議論の結果,法的判断を行う実質的な根拠が見つかり,根拠に基づき説得するのなら分かりますが,単に「部長(合議事件をやるときの裁判長)も左(合議事件で一番若輩の裁判官)もそういってるんですよー」とドヤ顔をしながら言われても・・・プライドはないのでしょうか?

 

 

このコラムの監修者

  • 増田 崇弁護士
  • 増田崇法律事務所

    増田 崇弁護士(第二東京弁護士会所属)

    2010年に増田崇法律事務所を設立。労働事件の専門家の団体である労働弁護団や過労死弁護団等で研鑽を積み、時には講師等として労働事件の専門家を相手にして発表することもある。2019年の民事事件の新規受任事件に占める労働事件の割合は100%である。