Q 労災申請は何時までできるのでしょうか?

A 請求する補償の内容によって異なります。また、何時から時効を計算するかも要注意です。

労災の給付の時効は2年のものと5年のものがあります。

精神疾患で労災申請する方に関係のある休業補償給付(給料の8割が給付されます)と療養補償給付(治療費の給付)は2年が時効です。

もっとも,2年経過してしまうと一切請求が出来なくなるわけではありませんので,その点はご注意ください。

つまり休業し始めてから3年経過した時点で,労災申請した場合は最初の1年分は休業補償給付の請求ができませんが,最近の2年分は請求できます。精神疾患の場合は、傷病手当金を貰っていたり、労災が使えそうなことに気づかなかったりで、申請が遅れる場合がありますが、その場合でも全部請求できなくなるわけではありませんので、あきらめる必要はありません。

また,療養補償給付は健康保険を利用して治療を行っていた場合は,健康保険組合が支払っていた7割分を返納した時点までは、健康保険組合が治療費を立て替えているため、労働者は労災保険に請求できないという理由で時効が進行しないという扱いになっています。そのため,事実上時効は関係ないことになります。

なお、5年となるのは次のものです。

まず、生存事案で関係があるのは、障害補償給付です。治療を続けてもこれ以上治らないという状態になると(精神疾患の場合は、長年治療を続けた末に、治るということもありますので、これ以上治療を続けても無意味というのは想定しにくいのですが)、症状固定となります。症状固定の場合は休業補償は打ち切りとなり、後遺症の等級に応じた一時金を支払って補償はおしまいとなります(7級以上は年金あり)。この後遺障害の補償については症状固定から5年間可能です。

その他に、これは生存の方は関係ありませんが、遺族補償給付は5年間となります。

また、生存事案では関係ありませんが、葬儀費用(死亡した翌日から)、介護費用(給付の対象となる月の翌月1日から)、健康診断給付(一時健康診断の結果を知り得るようになった日の翌日から)などは2年となります。

なお、会社に対する損害賠償請求は労災保険の請求が時効で不可能になっても請求できなくなるわけではありません。会社に対する損害賠償請求は安全配慮義務違反の場合10年となりますので、労災が時効でできなくなったとしても、会社に直接請求するという方法があり、時効の点だけで諦める必要はありません。

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このコラムの監修者

  • 増田 崇弁護士
  • 増田崇法律事務所

    増田 崇弁護士(第二東京弁護士会所属)

    2010年に増田崇法律事務所を設立。労働事件の専門家の団体である労働弁護団や過労死弁護団等で研鑽を積み、時には講師等として労働事件の専門家を相手にして発表することもある。2019年の民事事件の新規受任事件に占める労働事件の割合は100%である。