災申請は業務上の災害を補償する保険であり,業務によって発症したのであれば,既に退職していても問題はありません。

ただし,休業補償給付の時効期間は2年間です。2年を経過してしまうと労災申請の日の2年より前の休業補償については時効で請求できなくなってしまいますが,直近2年間分は引き続き請求することができます。

会社への上乗せ補償については,退職してしまうと,給料を支払えとは退職している以上請求できなくなります。しかし,働けなくなったことに対する補償や慰謝料は退職しても発生し続けます。働けた場合に獲得できた収入は発症の直前の時期の収入を基準に計算するのが一般的ですので,結局それ程結論が変わるわけではありません。

ただし,退職しなければ,復職の道が残されていることになりますし,和解金をもらって退職するにしても,復職を要求することで有利な解決が図られることがありますので,退職の求めに応じるのは慎重であるべきです。

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このコラムの監修者

  • 増田 崇弁護士
  • 増田崇法律事務所

    増田 崇弁護士(第二東京弁護士会所属)

    2010年に増田崇法律事務所を設立。労働事件の専門家の団体である労働弁護団や過労死弁護団等で研鑽を積み、時には講師等として労働事件の専門家を相手にして発表することもある。2019年の民事事件の新規受任事件に占める労働事件の割合は100%である。