• 1.解雇事件の大半は勝てますので、退職勧奨は自信をもって拒絶してください。
  • 2.会社と揉めたら再就職で不利になったなどという話は聞いたことがありません
  • 3.能力不足、適性欠如、協調性不足etc、その解雇・退職勧奨、本当に最終手段ですか?(最終手段としてしか解雇はみとめられませんので臆することなく拒否しましょう。)
  • 4.試用期間中の解雇や本採用拒否もほとんど無効となりますので、ひるむ必要はありません。
  • 5.会社の経営が悪化していても、いきなりの解雇は違法ですので、退職に応じるかは慎重に検討しましょう。
  • 6.納得できる「適正な条件」で退職するのは必ずしも悪いことではありません
  • 7.退職するのは再就職の目途がたってからにするのが鉄則です
  • 8.退職勧奨に自分で対応するのは、やってはいけないことの筆頭です。王将が単独で敵陣に突っ込むようなものです。
  • 9.弁護士に依頼すれば対応は弁護士に任せることができますし、人事のテクニックは弁護士には通用しません。
  • 10.退職勧奨の交渉はサウナの我慢大会と似ています。どちらが先に根負けしたかで解決水準は決まります。
  • 11.職業人生全体をトータルでの最適化が目標です。
  • 12.退職勧奨の相場も一応ありますが、弁護士がつくかつかないかで全く変わってきます

解雇事件の大半は勝てます。降格等も簡単には認められませんので、退職勧奨は自信をもって拒絶してください

私が受任した解雇事案の大半(8割以上)は解雇が無効ということを前提の解決(勝訴の判決を得て復職するだけでなく、解雇無効を前提として解決金を貰っての合意退職も含まれます。)をしています。(勝訴率は確実に勝てると思われる案件だけ受任することで容易に上げられますので、勝訴率はあまり意味がありません。ここで私が言いたいことは、解雇事件は大半は労働者側が勝っているということです。)
会社側は、退職勧奨に応じなければ解雇すると脅してくるかもしれませんが、それはほとんどの場合、法的には無効となるので、弱気になる必要はありません。

同様に、給料の減額などは、認められることは、それほど多くありません。給料の金額は雇用契約の中核的部分ですので、基本的に契約の一方当事者が変更することは認められません。特に、中途で採用したが、期待外れで給料にみあった仕事ができていないので採用から半年~1年程度で降格させるというパターンならともかく、長年勤務して徐々に昇給を続けてきたというのであれば、能力不足が認定されることはほとんどないでしょう。能力に問題があるのであれば昇給させなければいいだけですし、人の能力は特別な事情がない限り簡単には上がりませんが、下がりもしないからです。

会社と弁護士立てて争ったら再就職で不利になったなどという話は聞いたことがありません。

よく、心配されるのが、「うちの業界は狭いから・・・弁護士立てて争ったら、再就職に差し支えるのではないでしょうか?」というものです。
しかし、従業員と揉めたなんて話が広まってしまえば、ブラック企業という評判が立って採用活動に支障が生じかねませんし、現在の従業員からも「やっぱり、うちの会社のコンプライアンスはめちゃくちゃだよな、なんかあったら俺も訴えようかな」ということになり、訴訟リスクが増大します。
和解の際に会社側はほぼ必ず紛争については第三者に口外しない旨の条項(非口外条項といいます。)を入れるよう要求してきます。自ら絶対広めないでくれと要求してくるのですから、会社が言いふらすなどということはまずありませんし、私の過去の依頼者で、和解後に裁判になったことについて会社の方から情報が漏れて、再就職に支障が生じたという話は聞いたことがありませんので、心配する必要はほぼありません。

能力不足、適性欠如、協調性不足etc、その退職勧奨、本当に最終手段ですか?

解雇や降格が簡単には認められない理由は次のようなものです。

雇用契約というのは、会社の指揮命令に従って労働力を提供するというものです。労働者が特定の業務を苦手としているのであれば、会社は他の仕事を割り当てることは可能です。また、人の能力というのは様々な要素が絡むものです。あるときうまく結果を出せなくても、他の業務や苦手なところをサポートしてくれる上司や同僚の助力があれば十分な実績を出せるということも珍しくありません。かりに特定の場所で実績を残せなかったとしても、本人の問題と簡単に言えることではありません。そもそも、会社にとっては労働者は替えが聞く労働力の一つですが、労働者にとっては生活のほとんどすべてであり、解雇によって受けるダメージは甚大なものがあります。そのため、仮に成果が出せていなかったとしても、指導や配置転換を尽くして、それでもダメだった時の最終手段としてのみ認められるものです。
また、協調性欠如というのも、よくある解雇理由です。協調性が不足しているのは社長の方ではないかと感じる事案も少なくありません(オーナー経営者というのは強烈な個性を持っている方が多いですし、それは必要なことでもあります。)。人間関係でうまくいかなかったとして、それはどちらか一方にのみ非があるということはそれほど多くありません。にもかかわらず、一方だけを解雇という形で会社から強制的に排除するというのは基本的に認められるものではありません。また、雇用契約は仕事をするのが契約内容であり、仲良くするのが本来の目的ではありません。人間関係が険悪になった、その非の大半が解雇された労働者にあったとしても、業務の遂行自体は問題なく行っているのであれば(運転手など単独で行う仕事の場合、業務に支障が全くないことは珍しくないです。)、労働者としての義務は果たしていると言えますので解雇の理由にはなりません。業務の遂行が不可能になっているといった事情がなければ基本的に解雇の理由にはなりません。

試用期間中の解雇や本採用拒否もほとんど無効となりますので、退職勧奨は拒否してください。

この点については、最高裁判例があり、試用期間中であっても自由に解雇や本採用拒否できるわけではなく、指導を尽くすべきであり、会社側で本採用後の解雇ほど厳格ではないが正当事由を立証すべきだとされています。
しかし、実務上は試用期間中か否かで解雇の基準はほとんど変わらないのではないかと多くの弁護士が実感しているところで、その旨述べた書籍もあります。

会社の経営が悪化していたとしても、いきなりの解雇は違法ですので、すぐに退職勧奨に応じる必要はありません。

会社の経営上の都合による解雇は整理解雇といいますが、整理解雇も一定の要件を満たさなければ認められません。①解雇の必要性、②解雇回避努力、③対象選定の合理性、④手続きの妥当性の4つを満たさなければなりません。
まず、必要性の要件は必ずしも倒産直前である必要はありませんが、緊急性がない場合には、以下の解雇の回避措置を手厚く行う必要があります。
次に解雇回避努力ですが、これは新規の採用停止、経費の節減、役員報酬の削減(高額な報酬をもらっている場合)など様々な回避努力を尽くさなければならないとされています。また、倒産が差し迫っているのでなければ、割増退職金を用意して希望退職を募るのも必須です。そして、緊急性の度合いによりますが、月給の1~2か月分というのではほとんどのケースでは十分な回避努力を尽くしたとは判断されません。
また、選定方法は特段決まっているわけではありませんが、会社に反抗的な人を狙い撃ちしたような解雇は対象選定の合理性を満たさないとして無効になります。
さらに、なぜ解雇しなければならないのかについて、会社の経営状況を開示して説明しなければ解雇は許されません。
つまり、売り上げが徐々に減っていて経営が苦しいのはおそらく事実であるけれども、経営状況についての開示もないのでどれだけ苦しいのかはわからない、解雇前に割増退職金による退職の提案はなかったり、あったとしても一方的に提案したわずかな金額だけで理由の説明も行わずに、行ったような解雇はほとんどの場合無効となります。

ただし、本当に残り続けるかは慎重に考えるべきことで、「適正な条件」で退職するのは必ずしも悪い選択ではありません。

このように、退職勧奨は自信をもって拒否してください。しかしながら、ちゃんと交渉して納得できる条件で退職するのは悪い選択ではありません。

退職勧奨を受けているということは、会社から期待されていないというのは事実です。ですから、会社にしがみつくことで生活を守ることはできたとしても、今後働き続けて今までのようにやりがいを感じて働き続けるというのはあまり期待しない方が現実的です。

特に、異動は基本的に会社の裁量とされていますので、不本意な異動であっても給料が維持されるのであれば法的に争うのは困難です。そのため、仕事のやりがいといった側面に重きを置くのであれば新天地を目指すというのは正しい選択だと思います。

会社を辞めるのは再就職の目途が立ってからが鉄則です。少なくとも再就職した場合の自分の給料の相場を確認してからにしましょう。

では、「適正な条件」とはどのような条件でしょうか?

これは、要するに、あなたが転職したときにどの程度の条件が見込めるのかによって大きく変わってきます。再就職したら給料が半減してしまうというのであれば、泥水をすする覚悟で残るというのも必要な選択になりますし、退職するにしても減収を見越したかなり多額でなければ損をすることになります。他方で、外資系企業を転々としてきた方のような場合は同程度かそれを上回る条件で再就職できることも多いでしょうから、給料の半減が見込まれるような方と比べると金額にこだわる必要は小さいでしょう。何が「適正な条件」かは再就職後の予想される待遇で全く変わってきますので、再就職した場合の自分の相場を知ってからでなければ退職に応じてはいけません。

また、転職活動は退職している労働者の場合は採用する側も早く働きたいだろうと足元を見てきたり、次の当てがないのに勢いで退職してしまうというのは何か問題がある人なのではないかと思われがちですので、在職のまま行うのが鉄則です。そのためにも、ゆっくり時間をかけて退職勧奨の交渉は行いましょう。

退職勧奨に自分で対応するのは、やってはいけないことの筆頭です。王将が単独で敵陣に突っ込むようなものです。

人事の担当者は退職させるのは多くの場数を踏んでいます。一方、退職勧奨を受ける側は通常初めてか、せいぜい2~3度経験があるという程度でしょう。それだけでなく、働くというのは人生の極めて大きな部分であり、アイデンティティにもかかわるものですから、退職勧奨を受けた人は自分自身を否定されたように感じ大変ショックを受けるのが通常です。そこが、人事の担当者が退職にもっていくために付け込む大きな隙になります。大きなショックを受けて弱っている人に飴と鞭を使い分けて、退職にもっていくというのが人事の腕の見せ所です。
労働者が自ら人事と対峙するというのは敵の陣地に王将が単独で乗り込むようなものです。
戦いに勝つためには、王将をしっかりと守るのが基本戦略です。そのために、弁護士の活用が必須です。

弁護士に依頼すれば対応は弁護士に任せることができますし、人事のテクニックは弁護士には通用しません。

しかしながら、弁護士が受任通知を発送すれば、弁護士を選任するのは基本的な人権ですので、弁護士を通すようにとの意思を無視すれば違法行為になってしまいますので、人事の人間はあなたに直接退職勧奨をすることはできなくなります。このことで、労働者は精神的にはるかに楽になりますし、人事は攻撃の手段をほとんど奪われることになります。
弁護士は、退職に関する交渉の経験は豊富ですし、何より弁護士は退職勧奨を受けている本人ではありませんので、人事の最大のテクニックである、退職勧奨を受けて弱っている心の隙に付け込むという手法は使えません。また、解雇などをちらつかせても、弁護士は裁判で争うのは日常業務にすぎませんし、裁判になった場合の見通しを立てるのはそれこそプロですので、根拠を欠く脅しは通用しません。

退職勧奨の交渉はサウナの我慢大会に似ています。どちらが先に根負けするかで解決水準は決まってきます。

退職勧奨は、早く解決して給料の支払いを打ち切りたい会社と、早く解決して居心地の悪い今の会社に勤め続けたくない労働者の我慢比べです。どちらも早く妥結したいというところは一致していますが、先に根負けした方が譲歩を余儀なくされます。ですから、退職勧奨の交渉は並行して転職の見込みも探りつつ、時間をかけて行うというのが基本戦略です。
基本的には労働者は精神的に辛いという以外は早く解決する必要は乏しいので高めの金額を要求して譲歩には応じないという強気の姿勢を示し続けて、会社側が焦ってくるのを待つというのが基本戦略となります。

職業人生全体を見てトータルでの最適化が目指すべき目標です。

先ほど述べたようにできる限り交渉を長引かせるのが基本戦略です。しかし、例えば、もう転職先が決まっているので来月一杯で解決したいといった事情があるとあまり強気の交渉を行うことはできなくなってしまいますので、金額もそれなりで妥協することとなります。

もっとも、納得できる転職先が見つかったのであれば、退職金という目の前の交渉は多少譲歩しても、次で頑張ることで取り返せます。また、退職勧奨を受けている職場にいつづけるというストレスも軽視すべきではありません。職業人生全体を広い視野で見てトータルの損得で決断すべきです。

退職勧奨の相場も一応ありますが、弁護士がつくかつかないかで全く変わってきます

上記の様に、退職勧奨の相場はケースバイケースとしか言いようがないのですが、一応相場もあります。この点について会社側の労働事件の専門家は「1人で戦っている場合は比較的低額に終わることが一般的に多いと思いますが、弁護士・労働組合が労働者側についている場合は、6か月分なり、1年分なり、2年分なりといったまとまったお金で解決することが相当多いと思います」(嘉納英樹「企業人事労務のリアル」)と述べています。

退職勧奨の私の解決実績でも、上記の様に6か月~24か月ということが多いです。他方で、弁護士が就かない場合の解決水準は労働者側の弁護士の私にはよくわからないというのが実際ですが、既にパッケージが提案されている事案では、2~3か月ということがほとんどで、私が就任することで大きく金額が変わるということが多いです。

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