Q解雇や残業代などで調べていたら、労働審判を薦めている、記事をたくさん見ました。前の勤務先とはもう関わるつもりがないので、関係がどうなろうとあまり気にならないのですが、今後も同じ職種の会社に転職するつもりなので、再就職に影響しないか心配です。実際のところ、再就職に影響しないのでしょうか?また、労働審判に必要な期間や労力、その他デメリットがないか教えてください。

労働審判は訴訟の簡易版と考えてください

まず、一般的な訴訟な訴訟の流れを説明します。訴訟では双方が書面で請求している事件の事情を交互に書面で主張するというのを繰り返します。まず、訴状を裁判所に提出すると、第1回期日が訴訟提起から2ヶ月後くらいに指定され、第1回期日かそのさらに1か月くらい後の第2回期日で被告の反論が出てきて、さらに1か月後くらいに原告が再反論という流れで、双方が数回書面で主張を行い、一通り主張が終わった段階で証人尋問を行い、結審、判決という流れになります。証人尋問にたどりつくまでに順調に行っても半年から1年、証人尋問して判決にさらに最低半年はかかります。判決にいかずに和解する場合は証人尋問の直前直後に和解の話し合いをするのですが、通常最低でも半年はかかります。

一方で、労働審判は、申立から原則40日以内に指定される第1回期日までに書面での主張は一通りすることが予定されており、申立書には想定される争点に関する先行反論まで記載することとなっていますし、被告も第1回期日までに実質的な反論もしなければならず、さらに第1回期日で原告本人と、被告の代表者もしくは直属の上司、人事関係の責任者など事情が分かっている人が出頭しなければならず、その場で双方の事情を聴いて、実質的な事実関係の調査は第1回期日でほぼ終わらせ、第2回以降は和解の条件調整の場として機能しているというのが実務上の運用となっています。

なお、労働審判で和解が成立しないと審判となります。審判では判決文の様に理由を具体的に示すことはなく、結論だけ(解決金●円を支払って、合意退職する。)記載されます。審判に不服があれば異議をだせば通常訴訟になります。訴訟となると担当裁判官は交替するのが通常ですが、基本的にある程度相場感を共有しているので、労働審判の結論が完全に覆るということはそれほど多くありませんので、訴訟に移行するのは1~2割で、ほとんどの事件は訴訟にまではいかず和解か審判で解決しています。

労働審判のメリットは労力と時間が訴訟の数分の1となることです

訴訟では、前記の通り最低でも半年、普通は1年は覚悟しておく必要がありますが、労働審判では申立から2ヶ月前後ですので、時間は数分の1となります。また、労働審判は第1回期日で事実上審理が終わるので第1回期日前はかなり気合と時間を割いて準備する必要がありますが、その労力は1回限りです。訴訟ですと何回も弁護士と打ち合わせをして相手方の書面に対する反論を考え、その上で尋問で裁判所の前で話すということになり、労力も労働審判の方が半分以下で済みます。

労働審判だと、書面を提出するのは基本的には双方1回限りで、裁判所の誤解されてしまった場合十分な反論ができずに判断されるというリスクもありますが、圧倒的に早く終わるというのが最大のメリットです。

労働審判のデメリットは

まず、審理が事実上1回の期日で終わってしまうので、裁判所に誤解されてしまったときに誤解を解くための準備の機会がないというのがまず一つです。

加えて、早期にざっくりとした解決をするものですので、判決の場合ほど確実な心証が裁判所としても取れているわけではないので、請求する側(原告側)に多くの場合譲歩を要求されることがほとんどですし、解雇の場合は、裁判のときと比べて早期に解決しますので、過去分の給料がそれほど積みあがっていないため回収できる金額は小さくなりがちです。

会社が労働者として紛争になっていることを言いふらすのは通常あり得ません

会社は、ほぼ確実に和解になったときに、本件についてはむやみに口外しないという条項(非口外条項)を入れるように求めてきます。会社の側から言いふらさないでくれとわざわざ要求してくるのに、自ら話すなどということは通常あり得ません。

会社は従業員と紛争になっていることを話すのは百害あって一利なし

まず、そもそも、訴訟や労働審判で訴えられたということは会社のコンプライアンスに問題があるという場合が普通だからです。かなり熱心に法令遵守をしている会社でも紛争に巻き込まれるということもないわけではありませんが、通常はそういうことではありません。訴えるには通常弁護士の協力が必要ですし、勝算のない紛争に弁護士は通常協力しませんから、訴えられたということは法律を守らない会社だと推定するのが、通常です。従って訴えられたということ自体が会社にとってはマイナスの情報です。ましてや、現在の従業員に知られてしまえば、従業員の士気の低下や、最悪の場合、自分も訴えようかということになりかねず、損害が飛躍的に大きくなることも考えられます。また、従業員が会社を訴えたというような情報は個人情報であり、本人の同意なく第三者に情報を提供するのはそれ自体違法行為にもなります。

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このコラムの監修者

  • 増田 崇弁護士
  • 増田崇法律事務所

    増田 崇弁護士(第二東京弁護士会所属)

    2010年に増田崇法律事務所を設立。労働事件の専門家の団体である労働弁護団や過労死弁護団等で研鑽を積み、時には講師等として労働事件の専門家を相手にして発表することもある。2019年の民事事件の新規受任事件に占める労働事件の割合は100%である。