日本青年会議所の元事務局職員の女性の受動喫煙解雇の労働審判で、高額の和解が成立しました

既に大分経過してしまいましたが、日本青年会議所の事務局で勤務していた女性の受動喫煙解雇の労働審判で高額の和解が成立し、厚生労働省で記者会見を行いました。日本青年会議所の受動喫煙の労働審判事件についてはNHK等のメディアでも大きく報道されました。

日本青年会議所は、40歳以下のオーナー企業の後継ぎが集まって(自ら事業を立ち上げた創業経営者も加入でき実際少なからず会員となっていますが、時間も費用もかかるため、事業を立ち上げたばかりの創業経営者は熱心な会員は少なく、中心的に活動しているメンバーの大半は、跡取りや2代目、3代目という立場の人です。)、種々の慈善活動や憲法改悪の政治活動などを行っている団体です。中小企業の経営者、もしくはその子息ですので、基本的に社内にものを言える人間はおらず、しかも、他社で十分修行して実家を継いだという場合であればともかく、いきなり実家の会社で社会生活をスタートさせたり、ごく短期間で実家に戻った場合には社会経験や常識に乏しいということになります(無論、跡取り息子・娘が事業において立派な実績を残したという事例は多数あります。全体的な傾向の話として、お聞きください。)。そのため、日本青年会議所の会員はあまり質の良くない人間も少なからず含まれており、未だに職場でタバコを平気で吸うようなことが横行していました。そのため、会員が会議などで集まると、事務所内や隣接する会議室で喫煙が行われ、受動喫煙が繰り返されていました。

しかも、会員は団体の構成員(株主に近い立場)ですが、基本的に無給のボランティア参加しているため、お客様に近い立場であり、事業主として事務員の福利厚生の向上に責任を持つという意識は端から期待できません。役員の中には受動喫煙に理解を示す人もいないわけではありませんでしたが、役員も毎年変わってしまうため、時々で方針が変わってしまいますし、お客様でありボランティアで活動している会員へ強く指導するということは立場上、難しい状況にありました。

そのため、その年によって多少状況の変動はあるものの被害者の再三の申し入れにも関わらず十分な受動喫煙対策が取られることはありませんでした。被害者の女性は子供時代にあった喘息の症状が再発し、主治医の診断書などを添えて長年状況改善を求めてきましたが、先延ばしされるだけであったり、受動喫煙の問題など些事であると逆切れというべき対応を受けたりが続いていました。加えて、これまで社内での評価も問題なかったのに、突然低評価を付けられるなどの嫌がらせを受けるようになりました。

そのため、被害者はメンタル面で体調を崩して、休職するようになったのですが、日本青年会議所は突然解雇してくるという暴挙に出ました。

給料の約2年分という労働審判としては破格の解決金を獲得

当初、受動喫煙の分野では著名で、受動喫煙対策の条例の策定にも関わった、岡本光樹弁護士が交渉を担っていたのですが、メンタルヘルスの問題ということから、当職が裁判所への労働審判の申し立ての段階から関与しました。

私は、意見書等の作成をし、本来会社側の義務である受動喫煙の状況を改善しないというのが、本人にどれだけ悪影響なのかを立証し、給料の約2年分という労働審判としては破格の解決を得ることができました。

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このコラムの監修者

  • 増田 崇弁護士
  • 増田崇法律事務所

    増田 崇弁護士(第二東京弁護士会所属)

    2010年に増田崇法律事務所を設立。労働事件の専門家の団体である労働弁護団や過労死弁護団等で研鑽を積み、時には講師等として労働事件の専門家を相手にして発表することもある。2019年の民事事件の新規受任事件に占める労働事件の割合は100%である。